アメリカンヴィクトリアン様式データ
- 年代:19世紀後半
- 主な地域:アメリカ
アメリカンヴィクトリアン様式の解説
イギリスのヴィクトリアン様式の影響を元に生まれたスタイルで19世紀前半の産業革命を経て、「日の沈むことがない」といわるほど国力を誇っていた頃の様式がヴィクトリアンです。
建築を含めて様々な芸術が花開きましたが、統一したスタイルは生まれず、過去の様式のリバイバルが隆盛していました。
その傾向を引き継ぎ、この時期のアメリカでは、ゴシックリバイバルやロココリバイバルのデザインが流行しました。
また、この時代は、1870年に設立されたニューヨークのメトロポリタン美術館や、1876年の「フィラデルフィア万博」などの影響によってアートへの関心が高まるとともに、インテリアももうひとつのアートと捉え、アートに囲まれた空間として演出したいという動きが富裕層を中心として生まれてきます。
初めてホームデコレーションに関する本が発行されたのもこの頃です。
建築
住宅建築に顕著な特徴が見られます。
特にヨーロッパでリバイバルしたマンサールスタイルを、情報不十分のまま模倣したものが多く、マンサードルーフドーマー窓、これまでの様式にはないクラシカルオーダーで飾られた正面部、キューポラ、馬車寄せ、大型のベイウインドーなどを特徴としています。
これは、アーツ・アンド・クラフツ運動の先駆者であるイギリスのジョン・ラスキンやウィリアム・モリスの影響によって生まれた「ゴシックリバイバル」がきっかけとなっており、その頃すでに流行していたグリークリバイバルとも重なって複合様式といえます。
ニューヨークの「トリニティーチャーチ」や「セントパトリックス教会」など教会建築に見られるものは美しく、こうした建築に使われた天を刺すようなアーチ、ヴォールト天井、ステンドグラスなどのディテールは家具やアクセサリーにも見ることができます。
その後、スタイルはロマネスクリバイバルの住宅やインテリアにも表れ、切妻屋根、塔、バルコニー、飾りパネルの腰板、パーケットの床などの特徴が見られるようになります。
室内装飾
スタイルの統一を図るより、ステンシルで柄をすり出した壁、プリント壁紙、手の込んだ飾りを入れた天井回し縁がまわり、大理石、色つきのレンガやタイルをはめ込んだ暖炉、円形に張り出したベイウインドーなど異なるものの寄せ集めが流行します。
窓には重々しいドレバリーにスワッグ、バランス、ジャボなどをあしらい、戸口にはビーズ、シェル、竹細工ののれんが掛けられました。
家具
各スタイルのリバイバルとミックスによるデザインの家具が作られました。
イギリスに比べ、大型でごてごてした装飾が特徴的です。円形のソファなど変わった形の家具が盛んに作られパピエマシェやトルコ風のハソック、ダイヴァンがよく使われました。
ニューヨークの家具デザイナー ジョン・ヘンリー・ベルターは、ソファの背に多様な装飾彫刻を施すなど、ロココリバイバルの家具を得意としており、ローズウッドやウォールナットを使い、家具を作りました。
その他のインテリアアクセサリーには、アコヤ貝の象嵌、ニードルワーク、ビーズや貝殻のカーテン、チャコールで描いたポートレイト、センチメンタルな絵柄の銅版画、リトグラフなどがよく使われました。