- Established: 2015
- Nation:イギリス
- Website:https://a-cold-wall.com/
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ア コールド ウォール Overview
ラグジュアリーストリートの枠に収まらないACW
元ヴァージル・アブローの右腕と言われたサミュエル・ロスが立ち上げたとして、注目を集めるラグジュアリーストリートブランドのA-COLD=WALL(アコールドウォール)。
2015年にスタートしたばかりのブランドのため、誰もが知るブランドというわけではありませんが、知る人ぞ知るブランドとしてファッショニスタ、セレブリティから絶大な人気を集めるブランド。
アメリカやイタリアが中心のラグスト業界においてイギリス発というのは珍しく、ロンドンのカルチャーや社会問題をベースにしているところが他のラグジュアリーストリートブランドとは全く違ったコンセプトをブランドに落とし込んでいるように思います。
建築的、構造的なプロセスベースのアプローチをとるデザインスタイルは、ラグジュアリーストリートという流れを作った人々が10代から20代、30代と年齢を重ねる中で、デザインのポイントを進化、変革させていく姿勢を打ち出し、大人向けラグジュアリーストリートという新しいジャンルを確立する可能性があります。
アコールドウォールはというブランドはラグストに興味がない方も知っておいて損はないブランドですので、その魅力や考え方をチェックしていきましょう。
時代の変化に柔軟に対応していくスタイリッシュストリート
建築的なアプローチや工業的なマテリアルを使用した直線的で近未来的なデザインが特徴。
というのもデザイナーのサミュエル・ロスがもともとグラフィックデザインとプロダクトデザインを手掛けていたことで、アプローチのインスピレーションがファッションとは違う観点にあるからです。
コンクリートをイメージしたようなオーバーダイ加工や工業資材をデザインに落とし込む、ダメージや錆び加工のテキスタイル、手作業のペインティングもデザインプロセスを意識してもらうためによく使われます。
ただ、奇をてらったものを作るという観点よりも実用性や機能性といったところに重点を置いているところはクライアントを意識したプロダクトデザインを行っていた経験も活かされています。
アバンギャルドな表現を得意としているA-COLO-WALL(アコールドウォール)ですが、ラグジュアリーストリートと呼ばれるブランドの中でも、どちらかというと大人向けの印象が強い。
というのも、ワークウェアをベースとしたスタイルからテーラードなどの洗練されたメンズウェアに移行しつつあるからだ。
この変化の背景にはストリートウェアを楽しむ人々の年齢やキャリアによって、よりスタイリッシュなウェアを好む傾向を感じているからに他ならない。
グラフィックやプリントといったストリートの定番デザインから、素材にこだわったジャケットスタイルやスーツなどへ徐々に進化をしてきています。
こうした柔軟な考え方というのはヴァージル・アブローの下で学んだブランドとしての販売手法や提案方法、戦略的な考え方などが如実に表れています。
また、ロンドンに欠けている自由さを表現するためにユースカルチャーやサブカルチャーだけではなく、伝統的なオーダーメイドスーツのメッカであるサヴィル・ロウに対する挑戦的な意味合いもあるのかもしれせん。
ストリートブランドでありながら、素材やシルエットにモードスタイルのエッセンスを取り込んできたアコールドウォールのスタイリングは、幅広い年齢層に対してリーチできるものになっています。
社会背景をテーマにしたブランドメッセージ
A-COLD-WALL(アコールドウォール)というブランド名には、イギリスの持つ社会的な問題を背景にしたユニークなメッセージが込められています。
イギリスにはいまだに階級社会というものが存在します。
労働者階級、中流階級、上流階級などの階級であり、これはどこの国でも存在する概念だとは思いますが、イギリスではこれが顕著で国民みな中流の日本だとなかなか意識することが難しい問題でもあると思います。
こういった階級格差は地理的にみても明らかで、大理石の壁が多く使われる地域もあれば、セメントが多く使われる地域もある、こういった地域の特色と背景やストーリーを捉え、得られたアイディアを具現化するのがアコールドウォールというブランドであり、名前にはその階級の壁というものを決して超えることの出来ない「冷たい壁」という表現で表しています。
また、前に「A」がついているのは冷たい壁を物として扱うのではなく、テーマとして扱ってほしいという想いが込められています。
アコールドウォールのデザインに工業的なマテリアルが使用されたり、無機質なデザインを行うのもこうした階級格差というもの、そしてその特色のようなものをデザインというフィルターを通して表現しているのです。
ファッションに新たな表現の場を求めたサミュエル・ロス
セントラル・セント・マーチンズ出身でステンドグラスアーティストの父と心理学と社会学の教授でペインターをしていた母の下で生まれたサミュエル・ロス。
こうした両親のもとで育った彼はごく自然に社会的な観点やアート作品といったものに興味を持ちました。
特にスポーツウェアやアウターなどの生地に興味を持っていたことも現在の工業的なマテリアルの活用につながっているのでしょう。
成長に従い、15歳くらいの時にはNIKE(ナイキ)やadidas(アディダス)のリメイクを作って友人に販売するなどデザインや商才というところでもその才能を発揮し始めます。
グラフィックとイラストレーションで学位を取得し、その後はグラフィックとプロダクトデザインを始めます。
しかし、グラフィックでの表現に限界を感じ、友人のアンドリュー・ハーパーと2wnt4(トゥエンティフォー)を立ち上げ、ストリートアート、楽曲製作、動画制作、グラフィックデザインなどのプロジェクトを進行させ、それがオフホワイトを立ち上げ前のヴァージル・アブローの目に留まります。
これを機にロンドンに移住し、ヴァージル・アブローそして、カニエ・ウエストのもとでインターンとして働き始め、STTUSY(ステューシー)、BEENTRILL(ビーントリル)、APC×カニエ・ウエスト、そしてOff-White(オフホワイト)と3年半もの間、死に物狂いで働きました。
ファッションの世界に入ったのは、このヴァージル・アブローの誘いがあったからで、大きく頭角を現しヴァージル・アブローの右腕、オフホワイトのクリエイティブ・アシスタントとにまで登りつめていったのです。
ファッションを体系的に学んだことのない若者が、2015年には若干24歳にしてA-COLD-WALL(アコールドウォール)を立ち上げるに至り、2018年にはLVMH PRIZEのヤングデザイナー、そしてANDAM Fashion Award(アンダムファッション賞)という2つのファッション賞のファイナリストに選出されるという快挙を成し遂げました。
「言葉で表現することのできない芸術を、表現力豊かに取り入れられるものこそファッションである」
という言葉がグラフィックやプロダクトデザインの世界からファッションに可能性を感じたサミュエル・ロスの軌跡を物語っています。
安価にACWを体験できるポリシーンオプティクス
A-COLD-WALL(アコールドウォール)にはすでに廉価版であるデフュージョンラインが存在します。
それが、Polythene Optics(ポリシーンオプティクス)であり、ブランド創業から3年ほどでデフュージョンラインをリリースするというのは意外な展開です。
しかし、アコールドウォールはやはりラグジュアリーブランドなので、価格はかなり高価であり若者がそう簡単に購入できるものではありません。
そういった意味ではポリシーンオプティクスは、通常のラグジュアリーブランドのデフュージョンラインと比べてもかなり安価なので簡単に手の届くラグジュアリーとしてストリートシーンに大いに受け入れられています。
シルエットやデザインにしてもかなりベーシックでシンプル。
サミュエル・ロス、またACWの世界観にまずは浸かってみたいという人にはおすすめです。
ファッション業界の複雑な構造にチャレンジし、万人に平等なプラットフォームとしてポリシーンオプティクスをリリースしているので、ACWらしい取り組みといえるでしょう。
革新性が感じられる色濃いコラボレーション
勢いのあるラグストブランドは、色々なブランドからオファーが殺到するのでコラボレーションは必然的に多くなります。
アコールドウォールも定番のコラボから、ユニークなコラボまで色々なコラボレーションをすることでブランドの幅を広げています。
ディーゼル レッド タグ(DIESEL RED TAG)
DIESEL(ディーゼル)が影響力の強いデザイナーを選定してコラボレーションするプロジェクト「レッドタグ」というものを行っていますが、2019年にその第4弾として選ばれたのがACW。
このコラボでの最大の目玉は、これまでデニムを手掛けたことのなかったサミュエル・ロスが手掛けるデニム。
ディーゼルの持つ伝統のヘビーウエイト・デニムやデニムに対する深い造詣と加工技術、それに対してナイロンやテック素材といったACWの持つノウハウをミックスさせ生み出されたデニム・ジャケットやパンツ、そしてデニム以外にもウォッシュ加工スウェットなど様々なアイテムがリリースされました。
NIKE(ナイキ)
NIKE(ナイキ)とのコラボレーションは様々なブランドが行っていますが、ACWとのコラボも何度も行っており、その中でもテーマは「経年劣化」や「サスティナブル」などおもしろい。
時間の経過や人が使用することで製品が経年劣化をするということを意図的に早めるという普通に考えられるプロセスとは逆の発想を行っています。
あえて通常のコーティングをしないことで履き続けると色が変化したり、人が着ることでその熱によって素材が柔らかくなるなどちょっと普通のデザイナーだと考えつかないようなアイディア。
その次はサスティナブルを意識し、エアフォース1のアッパーに皮革の切れ端を再利用したフライレザーとスエードを使ったりと新しいアイディアにチャレンジしています。
A-Cold-Wall x Converse Collection(アコールドウォール×コンバースコレクション)
ナイキとのコラボレーションも有名ですが、コンバースともコラボレーションをしています。
これは日本では未発売だったというのが残念ではありますが、コンバースの持つ普遍性をACWがうまく解釈し、シンプルながらもとてもかっこいいデザインとなっています。
3つのモデルをリリースしましたが、どちらもハイカットのスニーカーをベースにしており、オールスターよりもナイキのエアフォース1に近いデザインになっていて、どんなスタイルにも合わせやすそうなローテク感が落ち着いた魅力を感じさせてくれる逸品です。
コラボレーションというのは、2つのブランドに対してそれぞれの顧客層を共有し、デザイン面でも新しい道を切り開くのに最適な手法ですがACWのコラボレーションは色濃くその味が出てくるので秀逸です。
ラグジュアリーストリートは空前の大ブームということもあり、群雄割拠の戦国時代のように新しいブランドが次々と出てきていますが、しっかりとしたコンセプトと信念があるブランドというのが生き残っていくのでしょう。
アコールドウォールの独自性は、際立っているので今後の展開というところからも大いに注目が必要です。
この記事を監修しているのは?
ラグジュアリーブランド・ハイファッション調査部門
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