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セルジオ・ロッシ Overview

世界3大ハイヒールブランド sergio rossi（セルジオ・ロッシ）

　 sergio rossi（セルジオ・ロッシ）は、クリスチャン・ルブタン、マノロ・ブラニクと並び、世界3大ハイヒールブランドと呼ばれるほどのラグジュアリーシューズブランド。

ジミーチュウやサルヴァトーレ・フェラガモ、ロジェ・ヴィヴィエなどがあるなかで現在の状況を考えると「うーん・・」と考えさせられるところもありますが、2015年にケリングからイギリスの投資会社インベスト・インダストリアルに経営が移ったことによって、かつての魅力を取り戻しつつあります。


　 というのもグループのトップに立ったリカルド・シュットが創業者であるセルジオ・ロッシ時代への原点回帰を求めてわずか1年ほどの間に世界中から数千にもおよぶヴィンテージモデルを買い戻すという遺産を復活させるという作業に取り組んだのです。
この取り組みによってセルジオ・ロッシが手掛けたスタイリッシュなシェイプが息を吹き返し、全盛期の1990年代のアーカイブに着目した『SR1』コレクションなど新しいアイコンとなりえるパンプスが続々とリリースされ、世界中の女性の心を刺激し始めました。

一時期は低迷していた感が否めず、ある程度のネームバリューと人気は保ちつつも、どこかぱっとしない印象だったセルジオ・ロッシですが、世界3大ヒールブランドと呼ばれるにふさわしい品格を再度まとっています。
2021年に再度買収されたことによってどういう方向性に向かっていくのか？というのはありますが、ブランドとしての価値向上に努めてほしいものです。

非常に残念なことにセルジオ・ロッシ氏は2020年に新型コロナウイルスに伴う合併症によってこの世を去ることになってしまいましたが、そのアーカイブに宿るDNAというのはラグジュアリーシューズ業界に大きな火を灯しています。

フォルムに徹底的にこだわるセルジオ・ロッシの魅力

　 セルジオ・ロッシのパンプスは、世界を代表するブランドへと駆けあがっただけの価値があります。
その価値のひとつとして、そのスタイリングの美しさが挙げられます。

「靴は身体の一部である」、そして「美しい脚を完成させるために重要な要素」だという信念を持って女性の魅力を最大限に引き出すためのフォルムを追及してきました。
セクシーさを強調するようなスティレットヒールと言われる先の尖った細く高いヒールが人気化し、これが世界を代表するハイヒールブランドとなって理由でもあります。


　 大胆なラインでありながらも女性の足にぴったりと寄り添って、女性が履きやすいホールド感のあるシューズを生み出してきました。
特にかかと部分が丸く優しいフォルムをしているので一般的な日本人の足と相性が良いと言われています。


　 また、イタリアらしいクラフトマンシップにも定評があり、シルエットや履き心地を活かすために靴を作る工程には余念がなく、熟練のアルチザンがなんと120もの工程を経て、14時間という作業をもって1足を完成させるのです。

これだけの情熱をもって紡ぎだされるシューズである以上、その品質の高さというのは疑いようもありません。

セルジオ・ロッシの拡大、低迷、再生の歴史

　 そんなセルジオ・ロッシですが、創業という意味では1951年であり、同じくシューメーカーだった父の後を継いで最初のハンドメイドシューズを作ったことがスタートです。
そこからミラノへ渡り、靴職人からノウハウを学びつつ、フォルムへの情熱をもってボローニャで修士号を取得しています。

こうした修業を経て、自身のブランドとして立ち上げたのは1966年、そして1968年に初めてブランドを冠したシューズを販売し始めました。
デビュー当初から「イタリアのクラフトマンシップとクラシカルでフェミニンなデザインの代名詞となった」とVOGUEにより言及されています。

1970年代に入り、ジャンニ・ヴェルサーチというファッション界のビッグネームとコラボレーションし、ファッションショーにセルジオ・ロッシの靴が採用されることで人気を高めていきました。
1980年代はブランドの拡大期に入り、やドルチェ＆ガッバーナ、アズディン・アライアなどといったブランドとの協業、アンコーナに最初のショップをオープンしたのを皮切りにトリノ、フィレンツェ、ローマ、ブリュッセル、ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドンへとショップを展開し、ミラノにショールーㇺを開くまでに成長しました。

1999年にはグッチを擁するケリングが買収を開始し、2005年には完全にセルジオ・ロッシをケリング傘下としましたが、この時代は徐々にブランドが勢いを失っていった時期なのでブランドからするとあまりいい時代ではなかったと思います。

2004年にエドムンド・カスティッロがクリエイティブ・ディレクターに就任し、初のブライダルラインなど新しいチャレンジを試みましたし、2008年からはMIUMIU（ミュウミュウ）などでキャリアを重ねたフランチェスコ・ルッソが後を継ぎ、バッグ、アクセサリーなどの靴以外のコレクションにも進出しました。

その後も2013年にアンジェロ・ルジェリがクリエイティブ・ディレクターに就任。
セルジオ・ロッシを一度辞めてトムフォードでデザイナーをしていましたが、呼び戻されてポジションに就きました。
創業当初のクラシカルで知的な雰囲気と現代的なセンスをうまく融合させるスタイルは高評価を得ていましたが、2015年のインベスト・インダストリアルの買収によってCEOにリカルド・シュットが就任したことで2016年に退任。


　 バタバタとクリエイティブ・ディレクターが後退していきましたが、新体制による再生戦略がリカルド・シュットの下で実行され、セルジオ・ロッシのDNAを引き継いだ洗練されたモダンコレクションを展開していました。

しかし、一度勢いを失ったラグジュアリーブランドというのは常に売却・買収というのが繰り返されるのが世の常。
2021年には中国の投資会社FFG（フォースンファッショングループ）によって再度買収され、その傘下に収まっています。
FFGはLANVIN（ランバン）の親会社にもなっていますが、この買収はセルジオ・ロッシの中国市場での発展を目指しているところもあり、また暗黒期に入っていく可能性もあります。

ファン層を広げる嬉しいコレボレーション企画

セルジオ・ロッシというと様々なユニークなコラボレーションをすることでも有名です。


　 おもしろいところでは、スポーツブランドのPUMA（プーマ）とコラボしたスニーカー。
最近ではラグジュアリーブランドとスポーツブランドによるコラボスニーカーは珍しくもありませんが、セルジオ・ロッシとプーマのコラボは2010年。

しかもスニーカーでありながらハイヒールという異次元すぎるミックススタイルなのです。
「80年代のストリートファッション」というテーマにバスケットボール界のスーパースターだったウォルト・クライド・フレイジャーが着用した「クライド」をアレンジしたモデルで常識を超えた見る人を楽しませてくれるコレクションとなりました。


　 Eco-Age（エコエイジ）とのコラボレーションは、セルジオ・ロッシがブランドとしてサスティナビリティを体現するもので、「グリーンカーペットコレクション」。

グリーンカーペットチャレンジ（GCC）認証されたイタリアの家族経営によって営まれる工場によって作られたオーガニックシルクを使用したバタフライからインスピレーションを得たイブニングシューズとポシェット。
さらに無鉛のスワロフスキーやクロムフローの皮革など環境問題に考慮した素材を使い、カーブオフセットを明言しました。


　 エスパリドーユブランドのManebi（マネビ）とは、マネビのもつアイコニックなエスパリドーユにセルジオ・ロッシのロゴが入ったシューレースを組み合わせることで特別感のあるデザインに仕上げています。
このコラボレーションは、2019年からスタートしたコラボプロジェクト「エスアール アディクション（srAddiction）」の一環としてリリースされています。


　 また、日本のとの関りも意外と深く、なんと歌手のJUJUともコラボレーションをしています。
JUJU自身が幼少期からセルジオ・ロッシにあこがれを持っていて、初めてハイヒールを購入して以来、購入し続けているというブランドとの関係性からこのコラボレーションへと発展。

ミュールやパンプス、ブーティなどが発表され、スエードのブライトスキンの繊細な色合いやフェミニンなマルチカラーなどカラーパターンにこだわったアイテムとなっています。

また、雑誌のBAILAとのコラボレーションでPVCトートバッグを付録にしたり、Preciousの特別付録としてコラボっレーションタイツを提供したりと日本限定のこだわりコラボも実施しています。

経営母体の変更によるブランドの再生戦略

　 セルジオ・ロッシは、2015年にケリンググループからイギリスのインベスト・インダストリアルに経営権が譲渡され、2016年からCEOにリカルド・シュットが就任し、ブランドの再生戦略を実行しています。

具体的には、ヴィンテージモデルを世界中から買戻し、セルジオ・ロッシ時代のアーカイブをブランドに復活させることを行い、ブランド創業時の理念をしっかりと踏襲したデザインというものに回帰しています。
このタイミングでデジタル保存も含め、ラスト（木型）やパーツ、広告に至るまできめ細かに整理され、ブランドの遺産というものが蘇りました。
シェイプにこだわったセルジオ・ロッシ本来のスタイルが復活したのです。

また、これまでラグジュアリー感がかなり全面に出て、どちらかというとイブニング向きのゴージャススタイル中心だったものをカジュアルスタイルや普段着でも合わせられるオーソドックスなデザインに落とし込んだことも功を奏しています。


　 2017年にいったん休止したメンズラインに関しても2019年には復活を果たし、リブランディングの象徴ともなった「sr1」はメンズにも登場し、メンズオンリーショップをオープンするまでになりました。

しかし、2021年にインベスト・インダストリアルから中国のFFG（フォースンファッショングループ）へと親会社が変わったことによってまた雲行きが怪しくなってきています。

ラグジュアリーブランドというのは流行りもあり、浮き沈みも激しいですが、リブランディングなどによってブランドを活性化することで一度は沈んだブランドであっても復活を果たします。
新生セルジオ・ロッシは、新しいブランド戦略のもと世界3大ハイヒールブランドとしてその地位を取り戻しつつありましたが、今後はどのような展開になっていくのかまだ分かりません。

この記事を監修しているのは？

ラグジュアリーブランド・ハイファッション調査部門

ラグジュアリーブランドやハイブランドでの勤務経験者、雑誌編集者、とにかくラグジュアリーブランドやハイブランドが好きなメンバーで編成。
好みや主観が入ったり、否定的な意見が存在するのは、ハイブランド.comの味であり、外部からの影響から独立しているからこそ出来ること。
世の中のトレンドや流れを敏感に察知し、常に新しい情報を発信出来るように奮闘しています。

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