ラグジュアリーストリートブランドを徹底解説
ラグジュアリーストリートブランドは、この流れを作り上げたオフホワイトやヴェトモンを中心にカニエ・ウエストファミリーやニューガーズグループブランドが中心となっています。
また、伝統的なメゾンもストリート出身のデザイナーをクリエイティブ・ディレクターとして迎えるなど本当の意味でラグジュアリーとストリートの垣根がなくなっているというのも大きなトレンドとなっています。
このビッグウェーブがやってきている中で様々なブランドが生まれてきているのも事実なので定番となっているラグストブランドからアップカミングなニューカマー、そしてストリートスタイルに傾倒しつつあるハイブランドをご紹介していきたいと思います。
1.ラグジュアリーストリートをけん引する定番ブランド
2.定番となれるか!?これから成長が期待されるニューカマー
3.伝統あるメゾンも今やラグジュアリーストリートに傾倒
ラグジュアリーストリートけん引する定番ブランド
カニエファミリー、ニューガーズグループを中心にラグジュアリーストリートをけん引するブランドです。
定番と言いつつもほとんどのブランドは2015年前後に生まれたほやほやのブランドなのですが、ラグスト界で大きな影響力を持っているブランドなので、迷ったらこの辺りのブランドを着ておけば間違いないでしょう。
◆ Off-White(オフホワイト) ◆ VETEMENTS(ヴェトモン) ◆ MARCERO BURLON(マルセロ・ブロン) ◆ Fear of God(フィアオブゴッド) ◆ AMIRI(アミリ) ◆ Palm Angels(パームエンジェルス) ◆ Martin Rose(マーティンローズ) ◆ PIGALLE(ピガール) ◆ 1017 ALYX 9SM(アリクス) ◆ A-COLD-WALL(ア・コールド・ウォール)
Off-White(オフホワイト)
ルイ・ヴィトンのアーティスティック・ディレクターにも就任したヴァージル・アブロー率いるオフホワイト。
ラグジュアリーストリートの代名詞にもなっているブランドで、クロスアローや白黒モノトーンの斜めストライプなどの定番デザインで誰が見てもオフホワイトと分かるインパクトのあるアイテム。
ラグジュアリーストリートをあまりよく知らない人でも、オフホワイトと聞くと「あーっ!」と思うくらい知名度が上がっており、時代の最先端でありど真ん中にあるブランドということで間違いありません。
VETEMENTS(ヴェトモン)
オフホワイトと並び、ラグジュアリーストリートをけん引するブランド。
これも分かりやすさというところがありますが、誰がみても分かるようなオーバーサイズのビッグシルエットアイテムやラグジュアリーレインコートなどアーバンストリートという新しいカテゴリを作り出したブランド。
デザイナーのデムナ・ヴァザリアはバレンシアガのクリエイティブ・ディレクターに就いたことで、さらにその評価は上がりましたが一世を風靡するような形になり、模倣品も増えたのでやや勢いは落ちてしまいました。
ちなみにデムナ・ヴァザリアはバレンシアガの前はルイ・ヴィトンでもデザインをしていました。
MARCERO BURLON(マルセロ・ブロン)
マルセロ・ブロンはイタリアのミラノ発ということで、ややモードな雰囲気も漂わせますが、本質はデザイナーの故郷アルゼンチンのカルチャーでとにかくモチーフ使いが有名です。
パタゴニアの伝統的なパタゴニア・クロス、大きな羽、蛇やサソリ、虎などの動物、また幾何学的なパターンやカラーグラデーションなどマルセロ・ブロン特有のデザインが多い。
かっこいいのか、ダサいのか微妙なラインを攻めているところが逆にマルセロ・ブロンの魅力だったりします。
Fear of God(フィアオブゴッド)
日本では知名度はそれほど高くはないですが、アメリカでラグストの本流を行くブランドで手作りにこだわり高級アメカジのようなスタイリングがポイント。
アメカジ好きだとたまらないデザインで、Tシャツやネルシャツ、ミリタリージャケット、デニムといった定番アイテムをレイヤードしてコーディネートを作っていきます。
素材はすべてメゾンブランドと同じレベルのものを使っている上、ハンドメイドなので希少価値が高く、すぐに売り切れてしまうのも日本まで届いてこない理由となっています。
AMIRI(アミリ)
ロサンゼルス発の職人技の塊のようなブランドで、ロック×アメカジ×グランジといった感じのフィアオブゴッドと近い匂いのするスタイリング。
実際にショットガンで穴を開けたり、膝を破ってバイカーディテールを仕込んだデニムなどベーシックなアメカジをラグジュアリーと呼べるレベルにまで昇華させているモノづくりブランド。
少しエディ・スリマンを思わせるようなロックテイストというのもそそりますが、LA発でロスの気候に合わせたカジュアルスタイルというのがメインになっています。
Palm Angels(パームエンジェルス)
ラグジュアリーストリートブランドの中でも一般的に想像するストリートブランドに近いのがパームエンジェルス。
豪快なロゴのパーカーやジャージなどスケータースタイルをベースにしています。
というのもブランド創業のきっかけが自分の足で歩き回りロサンゼルスのストリートカルチャーをスナップした写真集だったので、そこで出会ったカルチャーが色濃く反映されているのです。
実はデザイナーのフランチェスコ・ラガッツィはMONCLER(モンクレール)で10年以上も働き、アート・ディレクターを務めた人物なのです。
Martin Rose(マーティンローズ)
ロンドンで天才を呼ばれるマーティン・ローズは、デムナ・ヴァザリアのもとでメンズの立ち上げを行ったほどのデザイナー。
ヴェトモンの代名詞となっているオーバーサイズのアイテムも1年前のコレクションでマーティンローズが発表していました。
両親がジャマイカ人ということで幼い頃からレゲエカルチャーに慣れ親しみデザインのベースとして80~90年代のレゲエスタイルを感じ取ることも出来ますが、イギリス的なテーラードなエッセンスもミックスされた「ダサかっこいい」と形容されるスタイルはめちゃくちゃおしゃれ。
きれいめのラグジュアリーストリートを目指したい方にはお勧めのブランド。
PIGALLE(ピガール)
2010年にスタートしているラグジュアリーストリートの走りとも形容されるブランドで、ボックスロゴのパーカーなどのスポーティーなアイテムが人気。
ただ本当の魅力は、パリらしいオートクチュールのエッセンスをストリートに取り込んだミックススタイルにあり、上品なフレンチストリートという新しいジャンルを生み出しています。
オートクチュール×スポーツ
というピガール独特のハイセンスなアイテムは一味違うセンスを感じさせてくれます。
1017 ALYX 9SM(アリクス)
ローラーコースターバックルというジェットコースターの安全ベルトからインスピレーションを得て生み出されたディテールがブランドの顔となっています。
ローラーコースターバックルはDiorでも採用され、ベルトやバッグなどあらゆるアイテムで使われたことでアリクスの知名度も一気に上がりました。
ミリタリーアイテムにある胸の部分に装着するマガジンソケットなどを収納するバッグからチェストバッグを生み出すなど独自の発想によって新しいアイテムを生み出すマシュー・ウィリアムズのブランド。
A-COLD-WALL(ア・コールド・ウォール)
ヴァージル・アブローの右腕といわれたサミュエル・ロスが2015年に立ち上げたブランドで、ブランド名はロンドンの階級社会にはこびる上流階級と下流階級の思想や生活などの壁を現したもの。
建築的なアプローチ、工業的なマテリアルなど特殊な素材や加工をほどこしたアイテムが人気ですが、ラグジュアリーストリートの進化(トレンドをけん引した人たちが大人になる)に合わせてテイストを変えてきており、スタイリッシュなジャケットスタイルなどもリリースして注目を集めているメッセージ性の強いブランド。
定番となれるか!?これから成長が期待されるニューカマー
ニューカマーとはいえ、実質的なブランド創業タイミングは定番ブランドとほとんど変わらないブランドがほとんど。
ラグストの本流でもあるカニエ・ファミリーに入っていなかったりするだけなので、実力は折り紙付きです。
◆ HERON PRESTON(ヘロンプレストン) ◆ FAITH CONNEXION(フェイス・コネクション) ◆ NASASEASONS(ナサシーズンズ) ◆ 424(フォートゥーフォー) ◆ M+RC NOIR(マルシェノア) ◆ OAMC(オーエーエムシー) ◆ GCDS(ジーシーディーエス) ◆ AWAKE NY(アウェイクニューヨーク)
HERON PRESTON(ヘロンプレストン)
2017年スタートの非常に若いブランドではありますが、それでもすでに新興ブランドとはいえないほどの活躍を見せているヘロンプレストン。
BEENTRILL(ビーントリル)をヴァージル・アブローやマシュー・ウィリアムズと共に立ち上げていただけにラグジュアリーストリートの中心にいることは明らか。
ロシアのキリル文字で描かれる独特のロゴ、イメージカラーのオレンジなどヘロンプレストンのアイデンティティというのはもの凄くはっきりとしています。
ベースとなっているのはワークウェアで、工業用資材の再利用や作業服をラグジュアリーにするというアプローチは革新的であり、望外から飛んでくるコラボレーションにもとても驚かされるブランドです。
FAITH CONNEXION(フェイス・コネクション)
ブランドの設立としては2004年という古株なのですが、2015年にバルマンの元クリエイティブ・ディレクターのクリストフ・ドゥカルナンのデザインチームがごっそりと移籍してきてリブランディング、およびメンズウェアを開始したことで注目を集めるブランド。
強烈なグラフィックワークやパンク、プレッピー、ミリタリー、スポーツウェアなどをミックスした90年代風のグランジスタイルはシンプルにかっこいいといえます。
リブランディングのタイミングがラグストの最盛期と被ったのでニューカマー的な扱いになっています。
FAITH CONNEXION(フェイス・コネクション)のアイテム
NASASEASONS(ナサシーズンズ)
まさに新進気鋭のブランドと呼ぶにふさわしいのがナサシーズンズ。
2014年にブランドを立ち上げたアレクサンドレ・ダイランスは当時まだ16歳。そこから1年でリアーナやウィズ・カリファ、リタ・オラなどのトップセレブリティがナサシーズンズのキャップを被りだしたのです。
パリの人気セレクトショップ「コレット」、ロスの「424 on Fairfax」でも飛ぶように売れ、いまではウェア全般を取り扱うまでに拡大。
インフルエンサーをつなぐようなSNS戦略を巧みに使ったネクストジェネレーションです。
424(フォートゥーフォー)
セレクトショップの424 on Fairfaxが発祥のブランドで、2015年からオリジナルアイテムを販売し始めたことでブランド化。
赤地に424のロゴがシグネチャーとなっており、ファッションセレブの着用によってカリスマ的な人気を集めるブランドへと成長。
警察の蛮行に対するアンチの意味を込めたロゴ、レッド×ブラックというカラーテイストは退廃感がただようもので、社会や政治に対した反骨精神を落とし込んだメッセージ性のあるデザインが特徴です。
M+RC NOIR(マルシェノア)
パリの会員制ブティックMRCNOIRはストリートブランドの独自の審美眼から人気を集めていましたが、そこからオリジナルレーベルとして販売をスタートしたブランド。
オリジナルアイテムは大人気となり、ウィズ・カリファやヤング・サグ、ミーゴ、メトロ・ブーミンなどのアーティストに愛用され、完売続出のプレミア化。
人気化しすぎて思わず値上げしてしまうというありえない事が出来てしまうほどなのです。
日本でも限られたショップでしか取り扱われていませんし、かなりレアなブランドではりますがラグストの新興勢力としてはチェックが必要なブランドです。
OAMC(オーエーエムシー)
SUPREME(シュープリーム)の元ヘッドデザイナー ルーク・メイヤーがブランドをスタートさせ、その後さらに妻のルーシーと共にジル・サンダーのクリエイティブ・ディレクターに指名されるなど注目を集めているブランド。
ストリートテイストにワークウェアとクラシックの要素を加え、ミニマルに仕上げるスタイルは機能的かつ合理的であり、クオリティも高いと評判。
新しいラグジュアリーストリートの形としてのニューノーマルを展開してくれそうなブランドとして期待が高まります。
GCDS(ジーシーディーエス)
ブランド名の由来が「God Can’t Destroy Streetwear(神はストリートウェアを滅ぼせない)」という生粋のストリートブランド。
アバンギャルドでコミカルなデザインは、渋谷系ファッションを思わせるようなスタイルで、ミッキーマウスやハローキティ、ポケモンなどとのコラボレーションを行っていることを考えても、ジャパンカルチャーから影響を受けているブランドではあります。
ただ、それだけではなくハイエンドなイタリアンレザーやエキゾチックレザーを使ったコレクションやキャッチーなネオンカラーを使ったアイテムなど一歩先行く未来デザインと、過去への回帰の両方を感じるブランド。
AWAKE NY(アウェイクニューヨーク)
STUSSY(ステューシー)、SUPREME(シュープリーム)で経験を積んだアンジェロ・パクが立ち上げた事で注目を集めるブランド。
遊び心のあるデザインが、流行に敏感な若者から受けており、次世代ストリートブランドとして期待が集まっています。
伝統あるメゾンも今やラグジュアリーストリートに傾倒
今やラグジュアリーストリートという流れは伝統あるメゾンまでをも巻き込んだ大きな流れになっています。
バレンシアガはクリストフ・バレンシアガのオートクチュール時代と比べると全く別のブランドと言っていいくらい変わっていますし、グッチなども時代の流れを敏感に察知してストリートに大きく寄せてきているのが現状。
こうした時代の流れに乗っかった感のあるラグジュアリーメゾンも合わせてチェックしておきましょう。
◆ Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン) ◆ BALENCIAGA(バレンシアガ) ◆ GUCCI(グッチ) ◆ LOEWE(ロエベ) ◆ BURBERRY(バーバリー)
Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)
ルイ・ヴィトンで思い出されるのがSUPREME(シュープリーム)とのコラボレーション。
この発表には本当に驚かされましたが、ふたを開けてみると買い占め、転売の影響もありましたが売り切れ続出の大パニック状態になりました。
このコラボによって一気にラグジュアリーブランドとストリートとの距離が縮まった感覚がありますが、その後オフホワイトのヴァージル・アブローをメンズのクリエイティブ・ディレクターに指名したことによって完全にストリートとの融合に舵を切った感があります。
完全なラグストとまではいきませんが、ヴァージルの手掛けるヴィトンはかなりかっこいいです。
BALENCIAGA(バレンシアガ)
メゾンブランドの中でも最もラグジュアリーストリート感が強いのがバレンシアガ。
その立役者となったのが、ヴェトモンを立ち上げたデムナ・ヴァザリア。
100年以上の歴史を持つバレンシアガというメゾンが、今の若者からはストリートブランドとして認識されるほどその改革は進みました。
特にTriple S(トリプルエス)に代表されるスニーカーは、ダッドスニーカーという新しいジャンルを生み出し、スタイリッシュなウェアとハイテクスニーカーというコンビネーションを当たり前の世界に変えた功績は大きいと思います。
GUCCI(グッチ)
グッチに関しては、本流からは外れているのですがアレッサンドロ・ミケーレがクリエイティブ・ディレクターに就任してからというものストリート色の強いアイテムをリリース。
アレッサンドロ・ミケーレ自体は、2002年からグッチ一筋だったので意外といえば意外です。
ロゴやキャラクタープリントなどのアイテムや過去のアーカイブをうまく再解釈したディテールを使ってリアルラグジュアリーストリートを創り出しています。
ただ、ブランドとしての主張、GUCCI感が強すぎるので、ヤンキーチックになってしまっている感も否めないですね。
LOEWE(ロエベ)
スペイン王室御用達で、レザーブランドとして最高峰の評価を誇るロエベがなぜラグジュアリーストリートなのかと意外かもしれませんが、その理由は2013年にクリエイティブ・ディレクターに就任したジョナサン・アンダーソン。
ジョナサン・アンダーソンは、古くからマルセロ・ブロンの親友でありストリートに造詣の深いデザイナー。
LVMH傘下に入ったこともあり、ロエベというビッグメゾンに新しいインスピレーションを注入し、これまでにない素材やフォルムを追及することで新しいラグジュアリーストリートスタイルを築きつつあるのです。
BURBERRY(バーバリー)
バーバリーに関しても意外かもしれませんが、これはリカルド・ティッシの存在によるものです。
リカルド・ティッシはジバンシィを一気にストリートへと飛び込ませた立役者でもある存在、そのリカルド・ティッシが今度はバーバリーの変革を行っています。
リカルド・ティッシが就任してから、これまでのバーバリーチェックから新しいモノグラムパターン「TB」を発表するなどイギリスの伝統ブランドがストリートと融合できるようなコンテンポラリーなスタイルへと変化を見せてきています。
いかがでしたでしょうか?
一言でラグジュアリーストリートとはいってみてもすごい数のブランドがありますし、ブランドによってスタイリングやコンセプトも全然違います。
ハイブランドもストリートによってきている現状を踏まえると、選択肢は無限大にあります。
ラグストの中でも自分の好きなテイストを見つけ、自分らしいラグジュアリーストリートをコーディネートすることでオリジナリティのあるスタイルを作り上げることが出来るでしょう。