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JWアンダーソン Overview

世界中から熱い視線を集める新鋭デザイナーズブランド

　 イギリス発の比較的新しいブランドなのですがJW ANDERSON（JWアンダーソン）という名前、けっこう耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

その理由は2017年から行っているUNIQLO（ユニクロ）コラボの効果が大きいと思います。
JWアンダーソンとユニクロのコラボ「UNIQLO and JW Anderson」は、日本国内随一の知名度を誇るファストファッションブランドのユニクロとよく分からないけどハイブランドのデザイナーらしき人物のコラボレーションということで大きな話題を集め、新コレクションのたびに大盛況となっているのです。

JWアンダーソン、正式にはジョナサン・ウィリアム・アンダーソンというデザイナーは実はすごい人物で、なんとスペインのハイブランドであるLOEWE（ロエベ）のクリエイティブ・ディレクターも務め、停滞気味だったロエベを人気ブランドへと返り咲かせた立役者でもあるのです。
ロエベでアイコンバッグになっているハンモックやパズルバッグ、クッショントート、バルーンなどのユニークなフォルムやデザインを生み出した張本人でもあることから世界的な評価もとても高いデザイナー。


　 デビューからわずか数年でプレタポルテの英国ファッションアワードをいくつも獲得し、色彩豊かでユーモラスなデザインですが、その中にしっかりと可愛さや美しさ、カッコよさが散りばめられたセンスあるリアルクローズが魅力。
価格的にもラグジュアリーブランドまでいかないアクセシブルなラインなので、手の届きやすいラグジュアリーというのも、ロエベなどのトップラグジュアリーとは違ったポイントになっています。

デザインの方向性が完全一致するわけではないので賛否両論出てきそうですが、ブランドの質的にはMARNI（マルニ）やN°21（ヌメロヴェントゥーノ）などと近い雰囲気があります。
流行りのラグジュアリーストリートとも少し違い、価格的にはラグジュアリーブランドとも言い切れない、プレタポルテとしてはちょうどよいゾーンにいるのではないでしょうか。

ファッション業界に独自の存在感を放つJWスタイル

　 ジョナサン・ウィリアム・アンダーソンの原点はコンバース。
コンバースというのは年齢や性別を問わずに誰もが大好きなスニーカーなので、コンバースと同じように誰からも愛されるためにこれまでの固定観念を取り払い、ジョナサンの考える独自の世界観を構築しているのがJWアンダーソンのスタイル。

そのスタイルをいくつかのキーワードで表現すると「アート」、「ジェンダーレス」、「サスティナブル」というところに行き着くのではないかと思います。

まるでアートのような独創的なデザイン性

　 祖父がアート大好きな陶芸品収集家だったこともあり、もともとアートへの造詣が深く、ショーにも好きなアーティストからインスピレーションを得ていますし、イギリスを代表する反体制アーティストデュオであるギルバート＆ジョージやLGBTの権利を訴えるアーティスト トム・オブ・フィンランド、写真家のジェイミー・ホーク、陶芸家のジョアンナ・ウェイソンなどアーティストとのコラボレーションも多数発表されています。


　 実際にウェアデザインにもアートの香りを感じることが十分にできるほど装飾的で、ユーモラスなものが多く、多彩なカラーパレット、アシンメトリーなカットや素材の切り替え、袖や丈のバランス、レイヤリングなどおもしろいアプローチに目を見張ります。

ジョナサンは長く着られる服を作っていますが、ベーシックとはまた違っていますがとても装飾的なのに、なぜかシンプルで着やすいという２面性は天才的なセンスの成せる業なのでしょう。

性別に壁はないジェンダーレスなウェア

　 JWアンダーソンのウェアはジェンダーレスとよく言われます。
その最たる例は2014年秋のメンズウェアコレクションではないでしょうか？

そのスタイルはまさにボーダレス、ジェンダーレスで、メンズウェアなのですがワンピースのような丈のニットやブラウスのようなノースリーブシャツ、バルーンスリーブやフリルディテールなど中性的ともいえるコレクションで注目を集めました。


　 ジョナサンはファッションの民主化を信じていて、歴史的な流れから固定的な考えが蔓延していたファッションには自由さがなかったのですが、時代の流れと共に民主主義が浸透し、徐々に壁が崩れ去ってきていると実感しています。
そして、その中心にいるのがJWアンダーソンというブランドではないでしょうか。

男性は男性らしく、女性は女性らしくという凝り固まった思想ではなく、メンズウェアやウィメンズウェアという括りはあるとはいえ、着たい服を着る、着てもらうのがJWアンダーソン流のアプローチなのです。

サスティナブルであることはクリエイションの前提

　 サスティナブルであるということは、今やファッション業界では常識であり、義務になってきています。
その中でもブランドコングロマリットの最大手LVMH（ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー）では厳しいルールがあり、ジョナサンがLOEWE（ロエベ）でデザインするときにはその厳しいルールの中でモノづくりを行ってきました。

そもそもジョナサンのサスティナビリティに対する考え方は新しくやらなければいけないことでもなく、クリエイションの前提になるもの。
サスティナブルであることを宣伝活動に使うということも考えていません。

至ってシンプルに実践を行っていて、原材料の調達から素材づくり、そして職人の働く環境などクリエイションにおけるプロセスに長期的な視点を持って維持可能な仕組みづくりを行っているのです。

分かりやすいアンカーロゴがJWアンダーソンのアイコン

　 ユニクロとのコラボもあり、どんどんと知名度を上げてきているJWアンダーソンですが特に人気なのがアンカーロゴのアイテム。
「J」と「W」を重ねることで『いかり』のカタチを表現したロゴマークで、いまや完全にブランドのシグネチャーとして機能しています。

ロゴアイテムがトレンドにもなっているところはありますが、バッグやウェアにワンポイントでアンカーロゴが入ることでJWアンダーソンのアイテムだと一目で分かるようになりますし、ブランド自体がまだそこまで一般知名度を持っていないところが逆にアンカーロゴの存在価値を引き立てているとも言えますね。

短期間で駆け上った若き才能の歴史

　 JW Anderson（JWアンダーソン）は、2008年に創業したばかりのかなり若いブランド。
デザイナーであるジョナサン・ウィリアム・アンダーソン自身も非常に若く、新進気鋭の若手デザイナーで世界中から注目を浴びる人物でもあります。

出身は北アイルランドで、当初はファッション業界ではなく俳優を志しアメリカのワシントンへと渡りました。
ただ俳優の仕事には魅力を感じず、ダブリンに戻って百貨店で働いていた時に当時のPRADA（プラダ）でミウッチャ・プラダの右腕と言われたマヌエラ・パヴェージと出会ったことで一気にファッションの道へと歩を進め、またマヌエラからファッションに関する本当の意味での教育を受けたことで飛躍をしていったのです。

ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションでメンズウェアデザインの学位を取得したジョナサンは2008年に自身のブランドであるJ.W.ANDERSONを立ち上げ、ロンドンファッションウィークの2009年秋冬コレクションのオフスケジュールでデビューを果たし、ここからとんとん拍子に出世街道を駆け上がっていきます。

2010年にはイギリスファッション協会のNewGenからの支援を得ることにも成功し、本格的なファッションショーを開くことに。
さらに同時期にウィメンズのカプセルコレクションも発表し、大きな支持を集めます。

2012年にはEmerging Talent Award（新進気鋭のデザイナーに贈られるアワード）を受賞し、2014年のメンズウェア・デザイナーズ・オブ・ザ・イヤーや2015年にはメンズとウィメンズのダブル受賞とイギリスのファッション業界を席巻していきます。

こういった活躍をすると当然その才能に目をつけた大物との関係も出てくるので、2012年にはVERSACE（ヴェルサーチェ）のセカンドラインVERSUS (ヴェルサス)とのコラボレーションが行われたり、LVMHがJ.W.ANDERSONの株式を少数取得するという事が起こりました。

実はルイ・ヴィトンのクリエイティブ・ディレクターに抜擢されるのでは！？という憶測も流れましたが、2013年にLVMHの配下にあるロエベのクリエイティブ・ディレクターとして舵を取ることになったのです。

今のブランド名はJW ANDERSONですが、この名前は2017年からでJ.W.ANDERSONという「.」を取り改名されました。
そしてユニクロとのコラボレーションを行ったことで日本での爆発的な人気へとつながったのです。

JWアンダーソンの名を日本国中に知らしめたUNIQLOコラボ

　 日本においてJWアンダーソンというとUNIQLOのイメージを持たれている方がかなり多いのではないかと思います。
それくらい日本での知名度はUNIQLOコラボレーションによって醸成されたものと言えるでしょう。


　 2017年のスタート時にはイギリスを象徴するようなベーシックアイテムに対してJWアンダーソンの解釈を加えてアレンジ。
タータンチェックジャケットやトレンチコート、マルチボーダーなどベーシック・クラシックとカジュアルポップなクリエイションを上手く融合させた新しいカタチのライフウェアを提案しました。
ほとんど毎シーズンリリースされるようにコラボレーションは継続し、シーズンごとに新作が発表されていますが基本的なコンセプトは継続されています。

ユニクロは多くの著名デザイナーとのコラボレーションを行っており、安価に有名デザイナーのエッセンスを感じることができますが、あくまでユニクロ価格になるので当然ですがクオリティ、デザイン性は本家ブランドからは下がってしまい、デザイナーの無駄使いなどと言われることもあります。

JWアンダーソンのコラボも本家と比べるとデザイン性やクオリティなどが落ちることは当然ですし、どちらかというとユニクロ寄りになっていることも否めません。
JWアンダーソンのエッセンスを少し味わってみたいなら入門編として良いですが、ユニクロコラボだけを見てJWアンダーソンを判断するのは早計です。


デビューからあっという間にスターダムへと駆け上がったJWアンダーソン。 これからもユーザーの想像を超えるような新しい世界観を魅せてくれるのではないでしょうか。

この記事を監修しているのは？

ラグジュアリーブランド・ハイファッション調査部門

ラグジュアリーブランドやハイブランドでの勤務経験者、雑誌編集者、とにかくラグジュアリーブランドやハイブランドが好きなメンバーで編成。
好みや主観が入ったり、否定的な意見が存在するのは、ハイブランド.comの味であり、外部からの影響から独立しているからこそ出来ること。
世の中のトレンドや流れを敏感に察知し、常に新しい情報を発信出来るように奮闘しています。

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