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サンローラン Overview

エディ・スリマン退任後のサンローラン人気はいかに？

（出典:http://www.ysl.com/） サンローランは、イヴ・サンローランがオートクチュールブランドとして立ち上げ、時代を彩るスタイルを提案することで「モードの帝王」とまで呼ばれ、トップラグジュアリーブランドとしてその名を世界に轟かせました。

イヴ・サンローランが引退した後もトム・フォード、ステファノ・ピラーティといったデザイナーによって支えられてきましたが、サンローランがブランドとしての輝きを取り戻したのは2012年にクリエイティブ・ディレクターとして就任したエディ・スリマンがいた時代。
3か月ごとの売り上げが20％増になっていくなど、サンローランは爆発的な人気を獲得し、特に10～30代のこれまでの顧客層とはまた違ったファンを拡大していったのです。

エディ・スリマンが退任した後は、アンソニー・ヴァカレロが後を継ぎ安定はしていますが、サンローランの勢いが落ちたのは間違いないでしょう。
良い意味でも、悪い意味でもエディ・スリマンを踏襲しているところがあり、独自色が薄れてしまっているところがあります。
伝説的デザイナーの後任という立場なので仕方がないところもありますが、脱エディをしない限りはサンローランが大きな輝くことは難しいのではないでしょうか。

ファン層が大幅に拡大したエディ・スリマンスタイル

（出典:http://www.ysl.com/） 2012年にイヴ・サンローランのアパレル（洋服やレザーグッズ、ファッション小物など）はイヴ・サンローランからサンローラン・パリへとブランド名を変更しました。
この変更というのは、わずか数年でサンローランの生ける伝説となったエディ・スリマンによるものです。
ムッシュ・イヴ・サンローランの意思を受け継ぎ、アパレルラインの前身である1966年にできたプレタポルテライン 「イヴ・サンローラン・リブ・ゴーシュ」の設立当初の原点に立ち帰るという試みです。

エディ・スリマンがデザイン部門のトップに立ってからというものサンローランの評価が一変したと言っていいかもしれません。
前任のステファノ・ピラーティが悪かったというわけではないですが、エディ・スリマンの強烈な個性が良くも悪くもサンローランのスタイルを一変させたのです。

もともとメンズウェアでしのぎを削ってきたエディ・スリマンだっただけにメンズラインでもファンが増え、さらにこれまでは比較的年齢層が高めだったサンローランのユーザ層から若者にも大人気のラグジュアリーブランドとなりました。

天才 異才 奇才 エディ・スリマン

名前が違う2つのライン

（出典:http://www.ysl.com/） 2012年にアパレルラインは、イヴ・サンローランからサンローラン・パリへと名前が変わりました。
しかし、イヴ・サンローランというブランドはまだ残っています。
これはどういうことかというとアパレルとボーテ（化粧品や香水など）を取り扱うイヴ・サンローラン・ボーテは別会社だからです。
どちらも旧PPRグループ（現在はケリングに名称変更）の傘下にはあるのですが、もともとイヴ・サンローランはプレタポルテ（イヴ・サンローラン・リブ・ゴーシュ）、コスメのイヴ・サンローラン・ボーテという2つに分かれているのです。

ボーテの方は、エディ・スリマンではなくクリエイティブ・ディレクターがロイド・シモンズだったのでそのままイヴ・サンローラン（YSL）を継続することになったのです。

アパレルの方がムッシュ・イヴ・サンローランのコレクションの印象やエディ・スリマンの強烈な個性で話題を集めがちですが、実は日本で馴染みが深いのはボーテの方かもしれませんね。

イヴ・サンローラン・ボーテで展開されている化粧品や香水も日本でとても人気が高く、幅広い年齢層に受け入れられています。

歴史を知ってショッピングを楽しもう

（出典:http://www.ysl.com/） サンローランは故ムッシュ・イヴ・サンローランとピエール・ベルジェの作り上げたブランドです。
現在ではすでに閉鎖されていますが、その根底はというとやはりオートクチュールなのです。
シャネルやディオールなどが1900年代の前半から半ばにかけてのトップだとすると、半ばから後半にかけてはイヴ・サンローランがファッション界の主役でした。

ディオールの主任デザイナーとして鮮烈なデビューを飾り、その後自身のメゾンであるイヴ・サンローランを立ち上げ、そしてコレクションの中で生み出してきた数々の名作というのは現代でもアイコンとしてアーカイヴされており、そのスタイルは色を変え、素材を変え、カタチを変え、現代的なアレンジのもと最新のコレクションにも登場してきます。

歴史的背景や過去に発表された名作を知っておくことで現代のパーマネントコレクションがどういった経緯でそこにあるかというのがわかると思います。ディオールのアイテムを購入するときに、その歴史を知っておくと商品を選ぶ時に楽しくなることは間違いありません。

サンローランの歴史「いつも時代を作るモードの帝王」

エディ・スリマンの復帰によってサンローランは、爆発的な人気ブランドへと返り咲きました。
流行り廃りの激しいブランド業界ですので、いつ浮き沈みが発生するかというのは誰にも予測できませんがアパレルを中心とするラグジュアリーブランドの中では間違いなくトップクラスのブランドです。
イヴ・サンローランの伝統とロックを原点とするニュースタイルの融合はこれまでにないラグジュアリーなので、確実にマストアイテムとなっています。

しかし、そのエディ・スリマンも2016年10月の春夏コレクションでサンローランを勇退することになりました。
後任には、直近にヴェルサーチのクリエイティブ・ディレクターを務めていたアンソニー・ヴァカレロです。

圧倒的カリスマ性をもつスリマンが去った後、どうなるかと心配されていたサンローランですが、スリマンのタイトなスタイルやロックなスタイルは踏襲しながらも独自の世界観を演出し、新生サンローランとして順調な船出を切りました。。

人種の壁を越えたサンローランの功績

　 ラグジュアリーブランドであればブランドイメージを司るモデルの起用というのは、とてもセンシティブで気を遣うものです。
イヴ・サンローランというブランドもラグジュアリーブランドということでモデルの起用に関しては気を遣っているのは当然ですが、ランウェイを歩くモデルに関して改革を起こしたブランドとしても有名です。

オートクチュールをはじめとするファッションショーは、やはりヨーロッパが発祥であり、現在でもヨーロッパが中心と言えます。現在では、日本人モデルでも富永愛など世界で活躍するスーパーモデルもいますし、ナオミ・キャンベルやジョーダン・ダン、シャネル イマンなど黒人のスーパーモデルもたくさんいます。 しかし、以前はこういうわけではありませんでした。 多種多様な人種、民族が混在するヨーロッパですが、白人至上主義のようなものが根強く残っているのは仕方がないことなのかもしれません。

実は初めてランウェイを有色人種が歩いたのはイヴ・サンローランのコレクションだったのです。
これまでは白人のみがランウェイを歩いていたところをイヴ・サンローランがその歴史に終止符をうったということでとても意味があることだったと思います。

また、VOGUE誌というとファッション誌として世界で最も有名といってもいいかもしれませんが、この表紙に黒人モデルとして初めてナオミ・キャンベルが起用されたのもイヴ・サンローランによる働きかけがあったからなのです。
（これは黒人のモデルを起用しないというナオミの話を聞いたイヴが怒って、VOGUE誌に対してイヴ・サンローランの広告を全面的に取りやめるという脅しをしたというのが効いたのです。）

イヴ・サンローランの有色人種モデルへの貢献という意味では、ナオミ・キャンベルだけではなく、黒人スーパーモデルの走りとなったムーニアやダイヤ・グェイェなどもイヴ・サンローランの協力によって国際的なキャリアをスタートすることができています。
日本人では川原亜矢子をパリコレに出演させるなどもしています。

これらの事実からも分かる通り、イヴ・サンローランは自身が生み出すクリエイションだけではなく、有色人種がファッションの世界で輝くための土台を築いた人物でもありました。

物議を醸すした、細すぎるということ

　 こうしたイヴ・サンローランのファッション業界への貢献とはガラッと話が変わってしまいますが、ある意味エディ・スリマンもモデルの起用という意味ではぶっ飛んでいました。
彼の起用するモデルはそのシャープなシルエットのスタイルからして痩せ過ぎなモデルを起用する傾向にあります。
これ自体はエディの提案するスタイルからしていささか仕方ない面もあるのですが、それでも行き過ぎてしまうこともあります。

2015年に「ELLE」に掲載されたサンローランの広告においてミニのワンピース姿の女性が仰向けに横たわる写真が掲載されたのですが、このモデルの体があまりにも細すぎるということで苦情が寄せられ、広告の掲載禁止処分にされてしまいました。


こうした話からサンローランはスターデザイナーがそれぞれの個性を発揮し、世界に対して影響をあたえてしまうようなブランドであるということが改めて再確認できると思います。

→次は、サンローランの歴史「いつも時代を作るモードの帝王」

この記事を監修しているのは？

ラグジュアリーブランド・ハイファッション調査部門

ラグジュアリーブランドやハイブランドでの勤務経験者、雑誌編集者、とにかくラグジュアリーブランドやハイブランドが好きなメンバーで編成。
好みや主観が入ったり、否定的な意見が存在するのは、ハイブランド.comの味であり、外部からの影響から独立しているからこそ出来ること。
世の中のトレンドや流れを敏感に察知し、常に新しい情報を発信出来るように奮闘しています。

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