- Established: 2004
- Nation:アメリカ
- Website:https://www.alexanderwang.com/
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アレキサンダーワン Overview
リアルクローズの代名詞「alexanderwang(アレキサンダーワン)」
Alexanderwang(アレキサンダーワン)は、2004年にニューヨークでスタートしたハイファッションブランドという位置づけですが、いわゆるコンテンポラリーブランド(手の届くデザイナーズブランド)の代表格。
ラグジュアリーブランドほどの超高価格帯ではないですが、高級感とセンスがあってほどよい価格帯に抑えられているブランドです。
アレキサンダーワンは、3.1 フィリップ・リムなどと同様にニューヨーク発信ということもあり、現実感のあるリアルクローズとしてのファッションになっています。
特にアレキサンダー・ワンは、バレンシアガという老舗メゾンでデムナ・ヴァザリアの前任クリエイティブ・ディレクターを務めていた経験やH&MやGAP、ユニクロといったファストファッションブランドとのコラボレーションを行うといったラグジュアリーとファストファッションの両方の感性を持っていることも特筆すべきことです。
ストリートをベースにしてはいますが、ビッグメゾンも伝統をかなぐり捨ててストリートに傾倒し大きなブームを生んでいるラグジュアリーストリートという括りではなく、もっと普段着的なストリートとカジュアルの中間点にあり、そこにほどよいモードエッセンスが加わったちょうどよい服というのがアレキサンダーワンのスタイル。
最も尊敬するデザイナーがラルフローレンと語っているので、デザインの中からクラシカルなアメリカントラディショナルの匂いも感じることが出来ます。
こうしたアメリカントラッドの匂いというのはAMIRI(アミリ)やFOG(フィアオブゴッド)などにも感じられますが、ストリートとアメカジのミックスはとてもかっこいいです。
魅力はストリートウェアをカジュアルに着られる日常着
アレキサンダーワンの特徴的なスタイルというと日常的に着られるリアルクローズであるということ。
アレキサンダー・ワン本人が語る通りで、一般的にあるラグジュアリーブランドのように着飾ることで誰もがグラマラスになれるけど、興味があるのは日常的な洋服であるということ。
ベースとしてストリートウェアがあるのは、その通りだと思いますが時代の大きなトレンドとなっているストリートブームの核心というよりも、もっと身近で日常的でカジュアルなスタイルといえます。
しかし、アレキサンダーワンの凄いところは、日常を意識したリアルクローズであるにもかかわらず、そこにはしっかりとした個性があります。
というよりも個性を引き立たせるようなウェアなのです。
ありきたりなファッション用語で括ろうとすると、
ストリート×カジュアル×モード
という表現になるのかなと思います。
そしてカラーとしてはブラックが多用されるため、アレキサンダーワンといえば「黒」のイメージもありますが、黒という最もスタンダードなカラーをうまく使い、ミニマルでモダンなストリートカジュアルを提案することで、それがモード感を生み、シンプルであるが故に着る人の魅力を引き立たせるようになっているのです。
ショーの最後にTシャツとスキニージーンズで登場することもしばしばですが、それくらいのラフなスタイルでも美しく個性を感じるのが、アレキサンダー・ワンであり、クリエイションの本質なのです。
アレキサンダーワンの歴史
Alexander Wang(アレキサンダー・ワン)は、1984年にサンフランシスコで生まれ、少年時代はカリフォルニアで過ごしました。
両親は台湾人ですが、アレキサンダーが生まれる前に台湾からアメリカに移住しているため、アレキサンダー・ワンは台湾文化よりもアメリカのカルチャーの中で育っています。
両親がビジネスを成功させたため、裕福な生活を送ることができ、幼い頃からファッションに夢中で母親のショッピングについていったり、ファッション画を描いたりする子供で、兄の結婚式では当時15歳でしたが兄嫁のために35着ものドレスをデザインしてファッションショーを行うほどでした。
当たり前のようにファッションの道に進むためニューヨークへ移り、マーク・ジェイコブスやダナ・キャランなどを輩出する名門パーソンズ美術学校でファッションを学びました。
さらに在学中にマーク・ジェイコブス、デレクラム、ファッション誌VOGUEなどでインターンを経験しています。
パーソンズは中退し、2004年にALEXANDER WANG(アレキサンダーワン)をスタートし、兄嫁(義理の姉)と共にカシミアニットのコレクションを展開。
このコレクションをセレクトショップの大手バーニーズニューヨークが買い付けたため一躍注目を集めます。
通常は子孫に継承しながら一族経営を行うことは多いですが一般的な一族経営とは違った形で、貿易や生産を母親、アドバイザーとして兄といったように家族が一丸となって経営にあたるというのは台湾らしい家族のつながりを感じます。
2007年にはニューヨークコレクションに初めて参加を果たし、2008年にはCFDA(アメリカファッション協議会)アワードの女性向けウェアにノミネートされ、さらにVOGUEファッションファンドにて並み居るライバルたちを抑えてグランプリを獲得。
このグランプルによって賞金とファッションビジネスのプロからの1年間指導を受ける権利を得ました。
さらに翌年にはCFDAのスワロフスキーアワードとスイス・テキスタイル・アワードという2つの新人賞を受賞し、飛ぶ鳥を落とす勢いとはまさにこのことと思わせる躍進を見せます。
2010年にはニューヨークに世界初のショップをオープンし、2011年にはメンズウェアの展開もスタートさせ、グローバルファッションの中心への階段を着実に登っていきました。
2012年にはアレキサンダー・ワンがトップメゾンのBALENCIAGA(バレンシアガ)のクリエイティブ・ディレクターに任命されます。
まだ20代の若者に対してトップメゾンがその命運を託すというのは大きな驚きを持って受け止められました。
しかし、アレキサンダー・ワンがバレンシアガにもたらしたのは伝統とストリートの調和であり、後のデムナ・ヴァザリアにつながるような素晴らしい革新で、一般消費者向けにバレンシアガの門戸を開いたとも言えます。
元々2年契約であったため、更新はしませんでしたが確かな足跡を残したのです。
2015年にバレンシアガを退任した後は、シグネチャーブランドに専念し、2016年にCEO兼チェアマンに就任。
これまで母と義姉が担っていた役職を引き受けます。
2019年にブランドのリブランディングに着手し、ブランド名をALEXANDER WANGからalexanderwangへと変更し、コレクション周期を見直すなどの改革を行っています。
ブランド設立から日が浅いalexanderwang(アレキサンダーワン)ですが、すでに世界各国のセレクトショップで取り扱われ、直営ショップも増えてきています。
様々なコラボレーションにも積極的でアッパー層だけではなく、一般コンシューマー向けのデイリーリアルクローズとしてその存在感を高めているのです。
何よりも顧客重視のリブランディング
アレキサンダーワンは、早くから注目を集めたため大御所の様なイメージもありますが実はまだまだ若くフレッシュな感性を持っています。
旧態依然としたファッション界の慣習に疑問を投げかけ、新しいことにチャレンジする意欲に燃えているデザイナーです。
その気持ちが表面化したのが2018年におこなわれた大規模なリブランディング。
ブランド名をこれまでの「ALEXANDER WANG」から「alexanderwang」へと変更し、コレクションの発表時期をニューヨークコレクションの公式スケジュールからずらし、6月に春夏コレクション、12月に秋冬コレクションを前倒ししました。
このスケジュール変更は消費者に向けてより分かりやすさを求めたもので、暑くなる時期に来年の春夏、寒くなる時期に翌年の秋冬を発表することで季節とコレクションに関連性を持たせました。
生産や店頭への商品展開などを速めることになるのでブランドとしては大変な思いをしていますが、消費者のペースに合わせるということを重要視しています。
リブランディングの前の話ですが、面白いエピソードが2017年のニューヨークコレクションで起こりました。
ショーは本来ブルックリンで9時半から行われる予定でメディアやバイヤー、セレブなどお決まりの業界関係者が招待されていました。
しかし、実際にはそのショーよりも前にマンハッタンのノリータ地区でゲリラショーが行われ、招待された業界関係者よりも前に一般人にマンハッタンの真ん中で最新コレクションを発表したのです。
ショーの内容としてはむしろゲリラショーの方が華やかで登場するモデルも変わらず、フィナーレもゲリラショーでは最後にモデルが全員でウォークするというパフォーマンスがありましたが、ブルックリンのショーでは淡々と最新ルックを見せて終了するという始末。
SNSではすぐに拡散されましたが、業界関係者でもこの事態にすぐに気づいたのはごく一部。
ファッション業界の関係者よりもSNSを通じた一般消費者とのつながりをより重視したのではないかと業界人の間では激怒する人や自らの不要論を唱える人まで出るほどの騒ぎとなりました。
衝撃的なデビューを飾ったデニムライン
2015年にスタートしたデニムライン「Denim × Alexander Wang」ですが、新進気鋭モデルのアナ・イワーズを起用したビジュアルは、ほとんど脱げかけのデニムだけを着用した大胆なイメージで大きな話題を集めました。
デニムというのは、アレキサンダー・ワン本人もよく身に着けていますが、都市型のストリートカジュアルを提案するアレキサンダーワンにとってはなくてはならないピース。
素材や加工にもこだわり、ヴィンテージの質感を再現するために畳み線やひげのラインを出すためのウォッシング加工、手作業でのダメージ加工などナチュラルな色落ちとダメージでヴィンテージ感を再現しています
WANG 001(slim):1~2%ほどの微量のストレッチを入れ、独自のフィット感を生み出しており、裾とひざ部分はややルーズさを残し、ブーティを合わせた時の生地のたまり具合を考慮したデザインに仕上げています。
WANG 002(relaxed):メンズデニムを意識した100%コットンのヴィンテージスタイルでストレッチはありませんが、ローウエストとテーパードでリラックスしながらもフィット感を高めています。
WANG 003(boyfit):002と同じくメンズデニム仕様でストレートなヒップラインで腰履きしたくなるようなボーイッシュなシルエットとなっていますが、裾はややテーパードで野暮ったさはありません。
セカンドラインじゃないT by Alexander Wang(ティー・バイ・アレキサンダーワン)
アレキサンダーワンにはセカンドラインと位置付けられるT by Alexander Wang(ティー・バイ・アレキサンダーワン) があります。
略してT by(ティーバイ)と呼ばれることも多いこのラインですが、実はセカンドラインやディフュージョンラインという位置づけではなく、メインラインを補完する位置づけとして立ち上げられたブランドです。
コンセプトとしては、「Tシャツのように毎日着られる日常着」というもので、アレキサンダーワンのウェアは基本的には日常着ですが、メインラインだとカジュアルだけどモードでドレッシーな要素が強いのも事実。
そこをよりカジュアルに、より普段着にと寄せていったのがティーバイなのです。
Tシャツだけではなく、スウェットやストレッチの効いた素材などリラックスできるアイテムが多く、時代の流れにはあったラインではないでしょうか。
価格帯を見ても少しだけメインラインよりは安いところもありますが、一般的なディフュージョンラインのように明確にリーズナブルというわけでもありません。
メンズは特にティーバイとメインラインの違いが曖昧になっていたこともあり、2017年からメインラインと統合しています。
なので、メンズには「ティーバイ」がないのはそういった理由からです。
まだまだ発展途上のアレキサンダーワン。
今後もおもしろいコレクションや取り組みなどあっと驚くことをやってくれそうな期待が高まるブランドです。
この記事を監修しているのは?
ラグジュアリーブランド・ハイファッション調査部門
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