- Established: 1922
- Nation:スイス
- Website:https://jp.akris.com/
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アクリス Overview
AKRIS(アクリス)って人気はあるけど、知名度が低いのはなぜ!?
AKRIS(アクリス)は、3代にも渡る家族経営を続けているスイス発の女性向けのラグジュアリーファッションブランド。
AKRISとういブランド名は創業者のAlice Kriemler-Schoch(アリス・クリームラー=ショッホ)の頭文字に由来しています。
ラグジュアリーブランドで家族経営を続けるというのは、HERMES(エルメス)やPRADA(プラダ)などいくつかのブランドは継続しているが、大抵は経営難に陥り、ブランドコングロマリットや投資家などに買収されてしまう中、一族でデザインまで行う希少な存在。
露出度が低いのは大手のブランドコングロマリットのように大々的な宣伝をあまりしていないというのも原因のひとつでしょう。
プレタポルテがブランドのコアとなっていて、生地や素材の良さ、テーラリングのテクニック、クリーンで洗練されたデザインによって働く女性、特にエグゼクティブ層から支持を集めています。
近年ではバッグにも力を入れていて、アイコンバッグの『AI(アイ)』のように構築的なシルエットをしたデザインによってファンを拡大しています。
AKRIS PUNTO(アクリスプント)という名前を聞くこともあるかと思いますが、プントはいわゆるディフュージョンラインでデイウェアコレクションとして1996年からスタートしたものです。
プレタポルテを中心としたラグジュアリーブランドは、あまりに高価で一般層には広まりにくいのですが、ハンドバッグに商品を拡充したことで手の届くブランドになった感のあるAKRIS(アクリス)。
いったいどんな魅力を持ったブランドなのか?詳しく見ていきましょう。
働く女性に向けて~エグゼクティブ層がこよなく愛すファッション
アクリスは、3代に渡り働く女性のためにファッションを作り続けており、そのスタイルは「ディスクリート・ラグジュアリー(控えめで主張しすぎないラグジュアリー)」として高く称賛されています。
特に3代目のアルベルト・クリームラーは女性の生活をより快適にし、ありのままの美しさや優雅さを引き立てるファッションを目指しています。
女性のライフスタイルに着目し、どこへ出かけ、何をして、どう感じたいのか?を考え、女性の忙しい日々の瞬間を切り取って美しく彩る服を紡ぎだしていくのです。
ラグジュアリーファッションブランドの中ではデザインはとてもミニマルで、品格があり、スマート(知的)さを感じるもの。
ただ、単に地味なわけではなく、無駄をそぎ落としたミニマルさの中にも華があり、また多様性を感じることも出来ます。
素材はとても上質なものであることは言うまでもなく、身体のラインに沿った美しいシルエットは高いテーラリング技術によって成せるものです。
特にジャケットはシンプルであり、上品、上質というエグゼクティブ層に必要な要素を兼ね備え、機能性の高い素材になっていることでその着心地にも定評があります。
ビジネスの世界で戦う女性にとっても、そのセンスと知性を表現するのにうってつけのビジネスツールとなっています。
働く女性をサポートする服であるアリクスなので、ミシェル・オバマやモナコ公国シャルレーヌ妃、元アメリカ国務長官コンドリーサ・ライス、米国下院議長ナンシー・ペロシのような公人、国際弁護士アマル・クルーニー、ジャーナリストのダイアン・ソイヤー、また女優ニコール・キッドマンやサンドラ・ブロック、アンジェリーナ・ジョリーのような世界的なセレブリティに愛用されています。
AKRIS(アクリス)の素晴らしい素材たち
アクリスのクリエイションの根幹になっているのは素材であることは間違いないでしょう。
創業時には生誕の地であるザンクト・ガレンのエンブロイダリー(刺繍)を使ったエプロンを作っていて、さらにテキスタイル産業の中心として知られる街です。
現代でもビショフ・テキスタイル、フォスター・ローナ―、ヤコブ・シュレイファーといった革新的なテキスタイルを作る会社もザンクト・ガレンを拠点としていますし、最新テクノロジーを使った素材づくりでも協力関係にあるのです。
そんなアクリスの素晴らしい素材とはどういったものがあるのでしょうか?
大人の遊び心「ザンクト・ガレン・エンブロイダリー」
エンブロイダリーというのは刺繍のことで、多くのブランドで使われる伝統的な技術。
一種の芸術的な感性でもあり、手間ひまもかかるものなので、職人の腕が問われる技術でもあります。
アクリス創業の地ザンクト・ガレンでは古くから伝統的なエンブロイダリー技術の発達した場所であり、アリクスのコレクションには毎シーズンのようにエンブロイダリーを取り入れたアイテムが発表されます。
幾何学的な模様やグラフィックデザインが特徴的で、大人の遊び心をくすぐるような上質でアーティスティックな雰囲気がたまりません。
着ていることも忘れそうな「ダブルフェイス」
素材というよりも技術になりますが、アリクスを語る上ではダブルフェイスは欠かせません。
生地の端を2層に引き裂き、両端を折り込んで一針一針まつって完成させるというハイレベルな職人の技によって生み出される生地。
縫い目が見えなくなり、完璧な一枚の布地のように仕上げられるダブルフェイスは表裏が同じように美しく、薄い、軽い、しなやか、耐久性も高いという素晴らしい素材。
ジャケットやコート、ドレスなど様々なアイテムに使われ、裏地がないので着ていることを忘れるかのような軽やかな仕上がりになります。
コレクターも多数「フォトプリント」
アクリスはアートとファッションを融合させるブランドとしても知られます。
アルベルト・クリームラーはファブリックに印刷をするための新しい技術を探求し、写真の中にある美しいシーンをウェアやバッグなどに落とし込むことに成功しました。
有名フォトグラファーやアーティスト、建築家といった多くの才能からインスピレーションを得て、毎シーズンのようにフォトプリントをほどこしたウェアやスカーフ、バッグなどをリリースしています。
これまで見慣れたアイテムが一瞬でアートピースへと変貌する様に感動し、フォトプリントアイテムはコレクターズアイテムとしても人気となっています。
馬のしっぽを使う希少素材「ホースヘア」
ホースヘアは完全にCOMTESSE(コンテス)の技術を活用したものですが、モンゴルの大草原を走る生きた馬のしっぽの毛を採取し、特殊な染料で染め、また19世紀から使われている織機を使い、手作業で生み出されるという素材。
軽量で、しかも摩擦や熱耐性のある素材となっていて独特の光沢感があるのも特徴です。
コンテスではほとんどのバッグがホースヘアを使ったバッグになっていますが、アクリスでは財布などの小物類に使われることが多くなっています。
『A』をかたどったシグネチャーシェイプ「トラペゾイド」
アクリスのバッグや刺繍などでよく見られる台形型のフォルム(トラペゾイド)。
これは、AKRISの頭文字「A」をイメージしたもので、いまやデザインシグネチャーともなっているものです。
はじまりは2007年に開催された中国の金華建築芸術公園のパビリオンでメキシコ人の建築家タチアノ・ビルバオが設計した巨大な台形の建物を目にしてから。
このフォルムからブランドの頭文字である「A」を連想させ、これまでのブランドロゴとは違う新しいロゴとしてAI(アイ)バッグのデザインとして採用されたのです。
中国開催のパビリオンから新しいブランドシグネチャーの発想につながるところが、アートに精通するアルベルト・クリームラーらしいところです。
アートとファッションを融合させたニューミニマル
アクリスの根幹はディスクリート(控えめな)スタイルで、不要なロゴの協調やキャッチーなデザインを用いない女性の所作を際立たせるようなミニマルでビジネスシーンに適応できるもの。
これこそが、アクリスがエグゼクティブ層から大きな支持を集める理由でもあり、魅力でもあるのですが、それだけでは終わらないのがアクリスの真骨頂。
アートに造詣の深いクリエイティブ・ディレクターのアルベルト・クリームラーはコレクションの中でアーティストとコラボレーションしたり、またその作品からインスパイアされたデザインを発表しています。
これまでに抽象画家のカルメン・ヘレラ、ルーマニアのアーティストのジェタ・ブラテスク、ミッドセンチュリー期のデザイナーのアレキサンダー・ジラード、カナダ人アーティストのロドニー・グラハム、写真家のトーマス・ルフ、抽象芸術を代表するイミ・クネーベル、日本人建築家の藤本壮介など多数のコラボレーションがあります。
フォトプリントやエンブロイダリーといったアクリスの持つ技術を駆使し、ポップアートのような洋服を表現したり、ビビットなカラーを使った無限のパターンを創り出したり、美しい画像を表現したりとアーティスティックな感性を爆発させています。
ミニマルとアートという二面性を垣間見ることができるのもまたアクリスの持つ価値のひとつでしょう。
ハンドバッグのスタートはドイツ高級ブランドの買収から
AKRIS(アクリス)は、プレタポルテ以外にもハンドバッグが有名なブランドですが、実はハンドバッグのコレクションをスタートしたのは2009年とかなり最近。
というのも、アクリスのバッグの原点はCOMTESSE(コンテス)というドイツの高級ハンドバッグブランドを買収したことによるものだから。
コンテスというと、皇太子妃雅子さまがご成婚の際に持たれたため日本でも有名で、ホースヘアという馬のしっぽの毛を使った希少素材のバッグを作るブランド。
その時に使われたアイコンのPRINCESS(プリンセス)というバッグは、「園遊会」バッグと言われるほど日本セレブ層の社交場では定番になっているのです。
コンテスのバッグは非常にクラシックな雰囲気が強いのですが、アリクスのバッグはモダンで現代的、コンテスの技術を使ったホースヘアは財布など小物類が中心で、バッグはハイテク素材など様々な素材を用いデザインのバリエーションも豊富なのでコンテスとは全然違った印象で住み分けがされています。
アイコンバッグの『AI(アイ)』やALEXA(アレクサ)、ALEX(アレックス)などアルファベットの「A」から始まる名前でさらに『A』を印象付けるフォルムになっているところにブランドのアイデンティティを感じることができます。
家族経営で成長を続けるAKRIS(アクリス)の歴史
AKRIS(アクリス)の歴史の始まりは、1922年にアリス・クリームラー=ショッホがスイスのザンクト・ガレンの街でミシン1台を使って刺繍エプロンを作り始めたことから始まります。
ザンクト・ガレンという街は有名なテキスタイル・カンパニーが多くあり、またエンブロイダリー(刺繍)でも知られる街です。
アリス・クリームラー=ショッホはこの当時では珍しい女性起業家、創業者のような働く女性のために1944年に事業を引き継いだ息子のマックス・クリームラーが既製服(プレタポルテ)をはじめ、1950年に母の名前の頭文字をとってAKRIS(アクリス)というブランドをスタートしました。
マックスの時代にプレタポルテブランドとしての地位を確立し、実はGIVENCHY(ジバンシィ)のウェアデザインも行うほどだったのです。
1980年、3代目のアルベルト・クリームラーは19歳のときにパリに留学し、ジバンシィに入って修業を行う予定でしたが、父マックスの右腕となっていた人物が急死したことを受けて予定を早めてアリクスに入社。
すぐにアリクスのクリエイションを引き継ぎ、1987年には弟のピーター・クリームラーは法律と経済を学んでアリクスに入社し、経営面を担うようになりました。
まさに親から子へ、そして兄弟でブランドを切り盛りする家族経営のブランド、クリエイションから経営までもすべて家族経営でブランドを成長させていったのです。
3代目になってからのアリクスはヨーロッパから最重要マーケットのアメリカへ進出していきます。
ニューヨークの高級デパートであるバーグドルフ・グッドマンを皮切りにニーマン・マーカス、サックス・フィフス・アベニュー、ホルト・レンフリューなどにも展開。
1990年代から2000年代にかけて世界展開を加速させていきます。
1996年にパリ、そしてボストンのブティックをオープン、1999年には韓国ソウルに、2000年には東京に、2002年にはアリクス・ジャパンも設立します。
その後もオーストリアのウィーンやニューヨークのマディソンアベニュー、ドイツのハンブルクなど続々と店舗展開を行い、世界的なブランドへと躍進していきました。
アルベルト・クリームラーは2009年にスイスデザイン賞を獲得、またニューヨークの2010ファッション・グループ・インターナショナル(FSI)でナイト・オブ・スターズという権威ある賞を受賞しています。
この時期のアクリスの大きな転機はドイツのバッグブランドCOMTESSE(コンテス)を買収したことです。
2008年に買収を行い、2009年に初のハンドバッグコレクションを発表し、プレタポルテ中心だったブランドにハンドバッグという新たな主力商品が加わりました。
2015年には中国市場にも、2016年にはイタリアに最初のブティックをオープンするなど成長を続け、2022年には創立100周年を迎えています。
これほどまでに順調な足取りで100周年を迎えることができたブランドというのはなかなかないかもしれませんね。
アクリスをもっとカジュアルにフェミニンに「AKRIS PUNTO(アクリスプント)」
アクリスをご存知の方だとAKRIS PUNTO(アクリスプント)というブランドも目にしたことがあるかと思います。
プントは、1996年にデイウェア向けのスポーティーラインとしてスタートしたもので、一般的にはセカンドラインやディフュージョンラインと呼ばれるようなブランド。
価格帯としてはアクリスの1/2くらいとなっていて、本家アクリスに比べるとお求めやすいのですが、それでも十分にハイブランドと言える価格帯で決して安いブランドではありません。
アクリスがフォーマルでドレッシーな印象が強いならば、プントはスポーティーでカジュアル、ややフェミニン志向のあるデザインが特徴的ですが、よくあるセカンドラインのようにデザイナーが変わるわけでもなく、企画・生産を外部委託しているわけでもないので正真正銘のアクリスと言えるでしょう。
東京の帝国プラザホテルにはアクリスプントの単独店舗もありますし、公式サイトでもアクリスとアクリスプントは分かれてはいますが、同じサイト上で販売されています。
アクリスの入門用ブランドというよりは、明確に利用シーンを分けているという方が正しいかもしれません。
知名度こそあまり高くないものの、ハイエンドの顧客層からは絶大な支持を集めるブランドであることは確かで、ウェアよりも手の届きやすいハンドバッグや小物類が浸透すると一気に大ブレークが起こる可能性を秘めています。
この記事を監修しているのは?
ラグジュアリーブランド・ハイファッション調査部門
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