名作データシート
- 作品名: Tom Vac(トムバック)
- 発表時期:1999 年
- デザイナー: Ron Arad(ロン・アラッド)
- ブランド: Vitra(ヴィトラ)
(出典:http://www.ronarad.co.uk/)
ロン・アラッドのターニングポイント
1997年のミラノサローネで「ドムス・トーテム」というインスタレーションで、アルミニウムでできたスタッキングチェアを100脚積み上げて高さ10mもの巨大なオブジェを作るというパフォーマンスを行いました。
単にチェアを積み上げただけの巨大なタワーではなく、照明を中に仕込んでライトアップした様はエッフェル塔のような美しい輝きで訪れた人たちを圧倒したという伝説があります。
この時に積み上げられたアルミニウム製のスタッキングチェアが、後のトムバックチェアとなるプロトタイプ的な位置づけとなりました。
そして、アルミニウムで出来ていたチェアをポリプロピレンに素材を変更し、ヴィトラから発表した事によってこれまでウェルテンパードチェアやビッグ・イージーのようなメタルを使ったアーティスト肌のデザイナーという印象から工業デザインも出来る次世代のスターデザイナーとしての地位を確立する事になります。
トムバックはポリプロピレン製の製品がヴィトラから量産品として販売・流通がなされましたが、この時にアルミニウム版のトムバックも限定500脚で販売されています。
独自の発想が生みだした新しい世界
このトムバックチェアというのは、ロン・アラッドにとってもターニング・ポイントとなるような作品でした。
このチェアは、一枚のポリプロピレンとスチール製の脚のみというシンプルなデザインですが、シートの波はデザイン性と機能性を両立させており、サイドアームはゆったりと座れるように横に上にいくにつれて広がっていきます。
まるでブラックホールに吸い込まれていくかのような幻想的なデザインは、ロン・アラッドだからこその発想というべきでしょうか。
そして何よりも軽く、そして耐久性もある、スタッキングはシートに空いた穴に後脚が通せるようになっているといった意表を突くアイデアも素晴らしいです。
現代の環境への問題意識に配慮したリサイクル可能な素材ということでもポリプロピレンを使用しているという事は意味があります。特にヴィトラは環境に厳しいドイツに生産拠点を置いているのでFRPからポリプロピレン素材の家具へ大きく舵をきったという歴史もあります。
デザイン性、機能性、環境への配慮と様々な要素がつまった名作チェアですが、見た目はいたってシンプルなので場所を問わず馴染んでくれます。
リビングやテラスで名作トムバックを是非使ってみてはいかがでしょうか。
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