ニュー・ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アートとは?
ニュー・ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アートは、ニューヨークはマンハッタンにある現代美術専門の美術館です。1977年に元ホイットニー美術館キュレーターのマーシャ・タッカーによって設立されました。
2007年には、マンハッタンのバウエリー地区プリンス通りに移転したのですが、新しい建物の設計に関しては国際コンペが開催され、その勝者は日本人建築ユニットのSANNA(妹島和世・西沢立衛)とGensler(ゲンスラー)となりました。
特徴的な建物は、美術館のコンセプトである「ニュー・アート」を如実に体現しており、当時は治安が悪くニューヨークの非常階段とも言われていたバウエリー通りに新しい風を吹き込むランドマークとなりました。
ニュー・ミュージアムは現代美術館として非常に有望で、比較的無名なアーティスト、デザイナーの作品や革新的なデザインなどを多く所蔵する現代美術の登竜門的存在になっています。
SANNAのデザインした創造的建造物
2002年に委員会より依頼を受けた時に最初は、SANNAは建設予定地であるバウエリー通りをみて驚いたそうです。そこはニューヨークの中でも低家賃地域であり、犯罪率も高く、ホームレスがうろつくような地域だったのです。
しかし、そこにファインアートな美術館を建造したいという美術館側の想いに感銘を受けたSANNAは、園歴史と個性を受け入れ、アートともいえる美術館を設計したのです。
この建物は7つの長方形のボックスが積み上げられ、その全てが中心の軸から微妙にずれて設置されており、非常にもろくも見えるが、繊細な美しさを放っています。
建物の外観は、そのボックス全体をドレスアップするかのようにアルミ二ウムのメッシュで覆われています。このアルミメッシュがまるで美術館の柔肌のようにその容姿を美しく飾っているのです。
地上階は、大きなガラス窓によって開放的名雰囲気があり、上に連なる階の洞窟のような閉鎖的な空間とはまた一線を画すようです。
しかし、その洞窟のような展示スペースにもいびつに連結されたボックスの隙間から計算されつくした光が差し込み、それが見事なまでに照明としての役割を果たしています。
全体のスペースとして、非常にふわふわとして躍動的な感覚があり、絶対的な仕切りがあるわけではなく、ただ個々のスペースを主張するという絶妙の空間となっています。
比較的シンプルな構造に思えますが、このミニマルアートな雰囲気が展示物のインパクトを損なうことなく、美術館の建造物としての価値と展示物の価値を融合させていると感じさせられます。
ニュー・アートコレクション
1976年までホイットニー美術館で働いていたマーシャ・タッカーは、生きているアーティストの作品が現存する美術館のコレクションとしてほとんど入っていないことに疑問をもち、そうした現代を生きるアーティストの作品を展示する美術館を作れないかというアイデアのもとニュー・ミュージアムの構想を練りました。
最初の展示会「Memory」から始まり、1980年代には新鋭アーティスト ジョーン・ジョナス(1984)、マーティンパーヤー(1984)、レオン・ゴラブ(1984)、リンダ・モンターノ(1984)、アレンRuppersberg(1985)、キム・ジョーンズ(1986)、ハンス・ハーケ(1987)、ブルース・ナウマン(1987)、クリスチャン・ボルタンスキー(1988)、アナメンディエタ(1988)、ナンシー・スペロ(1989)、メアリー・ケリー(1990)などの展示を行いました。
そして、1980年代の後半からは絵画や彫刻以外の領域フィルム、ビデオ、テレビ、写真、パフォーマンス作品などにも展開していきました。
ニュー・ミュージアムは、数あるニューヨークの美術館の中でも、とりわけコンセプチュアルの美術館であり、またそのイメージ戦略に成功した美術館といえるでしょう。
時代を象徴する現代美術やこれからの新しいスタイルを積極的に展開することで、今後もますます世界の現代アートの領域で確固たる地位を確立していく美術館になると思います。