Louis Vuitton ルイヴィトン
こうして憧れのブランドは生み出される
物心ついた時には知っているブランド
(出典:http://jp.louisvuitton.com/)
あなたはいつからルイ・ヴィトンを知っていますか?
いつの間にか当たり前のようにヴィトンという言葉と知っていますが、一体いつから知っていたでしょうか。
気づいた時にはヴィトンを知っていて、そしてその虜になっている。こうした現象というのはヴィトンの素晴らしいプロモーション活動によって起こっているのだと思います。
これだけ知っているのにも関わらず、実はヴィトンというブランドはテレビコマーシャルを出していないのです。
言われてみれば、ヴィトンのコマーシャルって見たことないですよね?
実はこれ自体は特別なことではなく、ラグジュアリーブランドとしては一般的なことです。テレビCMというのは番組であったり、前後のCMとの関係もあるので、余計なイメージがついてしまうことを懸念してあまり使われないことが多いです。
ただ、テレビとは違い雑誌や新聞などのメディアに対する広告というのは出していますが、それ以上にうまいのがニュースなどに取り上げられることを宣伝効果として使うことです。
例えば大々的な新店舗のオープンや新製品の発表などメディアがこぞってルイ・ヴィトンを取材します。
世界No.1とも言えるブランドですから取材が殺到するのは当然なのですが、やはり我々から見た時の印象としては広告としてルイ・ヴィトンを見るよりもニュースとしてルイ・ヴィトンを見たほうがより興味をそそられるということなのです。
そして広告を打つ場合にはその広告自体がニュースとなるようなインパクトのある広告しか出しません。
「やがて。」「ずっと。」「いつも。」などのシリーズや「ルイ・ヴィトンは直ります。」などの名キャッチコピーを生み出しました。
女神に愛されるブランド
(出典:http://jp.louisvuitton.com/)
ルイ・ヴィトンをお気に入りのセレブリティというのは実にたくさんいます。
そして、セレブの中でも王侯貴族の御用達ということ実に多いです。
例えばナポレオン3世の妃ウージェニー皇后の御用達であったこと、1926年にインドのバロダ王のために作成したティーケースがエピの始まりになったりしています。
著名人ということであれば、オードリー・ヘップバーンは有名です。
オードリーの映画の中では随所にヴィトンのトランクやバッグなどが登場します。
この映画の印象が日本にヴィトンが入ってくるためのきっかけづくりとして有用に働いたともいえるレベルです。
他にはココ・シャネルもとても有名で彼女がスペシャルオーダーで作らせたバッグが定番の「アルマ」になったともいわれます。
日本人では歌舞伎の世界の市川團十郎、海老蔵親子などもとても有名で表参道店のオープン時のテープカットまで行ったほどです。
歌舞伎で用いる道具箱のスペシャルオーダーをしていたり、パリでの海老蔵襲名披露公演ではルイ・ヴィトンが後援をしているほどの間柄です。
こうしたミューズと呼ばれるヴィトンフリークの人たちによって支えられ、またこうした著名人が愛用していることが一般に知れ渡ることでより一層ヴィトンのステータスが上がっていき、我々の憧れを助長させているのです。
欲しいのに手に入らない!なんでないの?
(出典:http://jp.louisvuitton.com/)
ヴィトンの製品というのは機械生産ではなく手作りのクラフトマンシップです。
なので大量生産というのはなかなか難しいところがあります。
よく店舗に行ってほしいものを告げてもそれがその店舗にないということが往々にしてあります。
このないという状態がユーザからするとより欲しいという意欲を湧かせるのですが、ヴィトンからしてみればわざとやっているわけでなく、本当に品物がないのです。
だって手作りなのですから。
これは実によく出来た宣伝戦略になっています。
人は簡単に手にはいらないものを求める傾向があるので、こうして品薄状態に慢性的になっていることが、ヴィトンの製品に対する希少性を高める結果となっているのです。
こうしてみると販売促進のためのチャネルを非常にうまく使っていることがわかりますね。
広告を打たずとも大々的なプレスリリースによって取材されることでブランドが取り上げられ、多くの著名時にに使われることで憧れを高め、そして品薄状態によって希少性を高め射幸心を煽るといった欲しくなるための流れができています。
オンリーワンブランドは偽物が氾濫!
ブランドイメージの確立にむけた活動
(出典:http://jp.louisvuitton.com/)
ルイ・ヴィトンというブランドのイメージはどういったものでしょうか?
とにかくセレブなイメージ? 頑張って自分に対してのご褒美? 背伸びしてもなかなか届かない高嶺の花?
人によって様々なイメージを描くとは思いますが、共通して言えることはヴィトンというのはハイブランドの中でもトップクラスだという認識でしょう。
こうしたイメージを作り上げるために、日々努力を続け、ブランドイメージの向上とブランド力の強化に取り組んでいるのです。
トップブランドの宿命 偽物との激しい戦い
(出典:http://jp.louisvuitton.com/)
これだけのブランド力を持っているヴィトンですので、当然その恩恵にあやかろうとする模倣品が市場には溢れかえります。
そしてその模倣品というのは年々非常に手のこんだものが出てきており、それら偽物との戦いというのがある意味ルイ・ヴィトンの歴史ともなっています。
ヴィトンはこうしたブランドイメージを傷つける偽物を決して許しません。
これほどまでに頑なに偽物に対して敵対心を持つ理由は、こうした偽物を駆逐するための活動を積極的に行うことが、ルイ・ヴィトンというブランドと顧客との信頼関係の基礎となっているからです。
なぜ、モノグラムがヴィトンの代名詞的なラインと思われているかというと、この偽物があまりにも多く出回ったたためとも考えられています。
偽物への対策というのは、色んなやり方で行っています。
例えば、一般消費者向けには知的財産権を守るためのセミナーを行ったり、企業向けには模倣品を扱っていれば警告書を送り警告を出す、そして最も効果的でかつヴィトンというブランドを際だたせるのは他には真似できないようなオリジナリティあふれるラインを発表することでその独自性を保つこと、そしてしっかりとした商標登録によってその権利を保護しているのです。
本物、それともニセモノ?
(出典:http://jp.louisvuitton.com/)
ヴィトンの製品に対してそれが正規品であるか、それとも模倣品であるのかを判定できるのはそれは本家ルイ・ヴィトンのみなのです。
リサイクル業者や並行輸入業者といったところでそういった正規品かどうかを判別する能力はあるとは思いますが、実質的に彼らにはそうした権利はありません。
ただこうした業者が正規品を判別を依頼することはあながち間違っているとも言えません。
なぜならば彼らはいわゆるニセモノを販売してしまうと法律上逮捕されてしまいますので、鑑定は必死になりますし、当然判断のつかない場合は取り扱いすらしません。
そういう意味では日本における日本流通自主管理協会(AACD)に加盟しているようなショップで購入するのは、正規品か否かという点ではある程度の信頼感はおけるのではないかと思います。
ライセンス製品は許可しない
(出典:http://jp.louisvuitton.com/)
ライセンス製品というのをご存じでしょうか?
よく有名ブランドのハンカチや下着などが一般の量販店などで売られているのもを見かけると思いますが、あれがいわゆるライセンス製品の販売というものです。
ブランドに対してロイヤリティーを支払う代わりに名前を使わせてもらうというビジネスモデルなのですが、ヴィトンはこうしたライセンス販売を許可せず、ブランドの使用権をすべて自社で管理します。
このライセンス契約というのはいわば諸刃の剣なのです。
ブランド力があるからライセンス販売という手法が成り立つのですが、ライセンス販売を乱発することで身の回りにそのブランドロゴがついた製品が溢れてしまい、ブランド価値を地に落とすような結果になってしまう可能性があります。
ヴィトンはこうした可能性を考慮し、これまで創業から150年以上もの間一度もライセンス販売を許可したことがありません。
ライセンス契約というのは複数の生産・販売チャネルを持つことができ、と同時に劇的に売上が上がるという非常に美味しい仕組みです。
また、ライセンス契約をせずにすべて自社だけで完結しようとすると非常に莫大なコストと設備が必要です。
それだけにライセンス契約に走ってしまい、落ち目になったブランドもあるのですが、ここには一切手を出さずブランドイメージという最大のバリューを守り続けているのがヴィトンの魅力なのです。
安価なセカンドラインは作らない
セカンドラインというのは各ブランドの中で発表されているメインブランドよりも少し安価なブランドラインのことです。
例えば、ヴィトンのデザイナー マーク・ジェイコブスの名前を冠した「マーク・ジェイコブス」というブランドであれば、「マーク by マーク・ジェイコブス」というセカンドラインがありますし、有名なところでは「プラダ」のセカンドラインとして「ミュウ・ミュウ」があります。
こうしたセカンドラインというのはいわゆるメインブランドよりも価格が安くなる、要するに品質まで下がっていることを意味しており、ヴィトンはこうした自らの価値を落とすようなことはしていません。
セカンドラインが必ずしも悪いかというとそういうことではなく、ブランド似ての届かない人でもセカンドラインがあることによってそこに手が届くというユーザから見た時のメリットはありますし、ブランド側からみてもより多くのユーザに自社の製品を届けることができるという利点はあります。
しかしメゾン・ブランドであるヴィトンにとってブランドイメージはブランドとしての核となるので、多くの層に購入してもらうというよりは手を伸ばしてもなかなか届かないような「憧れ」でいいのです。
こうした憧れの感情が人々の中に生まれることによってルイ・ヴィトンというブランドが人の深層心理の中で至高の存在へと押し上げられているとも思えます。
ヴィトンはブランドイメージを守るためにニセモノと戦い、安易な売上増加のための拡大路線をとらずに地道な活動を続けているということがわかります。
こうした活動のひとつひとつがユーザの信頼感を高め、ブランドとして価値をより高めていく結果となっているのでしょう。
この記事を監修しているのは?
ラグジュアリーブランド・ハイファッション調査部門
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