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イギリスファッション界の救世主となった歴史

卒業と同時にVOGUE（ヴォーグ）デビュー

　 アレキサンダー・マックイーンの歴史というのは過激ともいえるコレクションの歴史ともいえるのではないかと思います。

ブランド創業のきっかけともなったのが、セントラル・セント・マーチンズの卒業コレクション「獲物を狙う切り裂きジャック」。
この卒業コレクションにVOGUE（ヴォーグ）の有名編集者だったイザベル・ブロウが訪れ、アレキサンダー・マックイーンのコレクションを5000ドルという価格ですべて買い取ったことがデビューのきっかけとなったのです。

イザベル・ブロウが非公式ではありますが、アレキサンダー・マックイーンのPRを担い、VOGUEにアレキサンダーの服を着て紙面を飾ったことが大きな話題を呼びました。

アレキサンダー・マックイーンの本名はリー・アレキサンダー・マックイーンなのですが、ミドルネームのアレキサンダーを使うようにアドバイスしたのもイザベル・ブロウだったと言われています。
デビュー時は失業手当をもらっている状態だったので、サンデータイムズに名前が出ているのに、職業安定所で名前を呼ばれるのが嫌だったというのも理由のひとつです。

こうして1992年に晴れてアレキサンダー・マックイーンというブランドが誕生しました。

賛否両論ありながらも名を上げ続けたコレクション

1993年「タクシードライバー」

　 デビューコレクションとなったのは1993年の「タクシードライバー」。
マーティン・スコセッシ監督の映画「タクシードライバー」に登場するトラブルまみれの主人公トラヴィス・ビックルとタクシードライバーである自身の父親へのオマージュをささげたコレクションとなりました。

ファッション業界全体で大流行したお尻の割れ目が見えるほどのローライズパンツ「バムスター」もこのコレクションで披露されたものです。

1995年「ハイランド・レイプ」

　 アレキサンダー・マックイーンを一躍有名にしたコレクションとしても名高い1995年の「ハイランド・レイプ」
服がボロボロにあり胸や下半身を露出している、あまりにも過激な内容だったため大バッシングを受けたのですが、本来の意味はイングランドに侵攻された祖国スコットランドに対する想いと自身の過去のトラウマから女性に強くあってほしいというメッセージが込められていたコレクションです。

1996年「ザ・ハンガー」

　 ハイランド・レイプでの批判に懲りることなく、1996年の「ザ・ハンガー」もかなり強烈なコレクションで、トニースコット監督の映画「ハンガー」をモチーフにしており、吸血鬼役のカトリーヌ・ドヌーヴとデビッド・ボウイの悲恋を描いたもので美しさが生まれるのは最も奇妙な場所、嫌悪をもよおす場所というインスピレーションから生きている蛆虫が詰まったアクリル製のビスチェで度肝を抜きました。

1998年「ザ・ゴールデン・シャワー」

　 1998年の「ゴールデンシャワー（放尿プレイ）」と名付けられたコレクションは、スポンサーのアメリカン・エクスプレスから要請によって「Untitled（無題）」に変更されました。
ショーの演出としてランウェイを歩くモデルの上から水を降らせ、金色のスポットライトで輝かせるという当初のタイトル通りの演出はそのままでした。

1999年「No.13」

　 1999年に行われた「No.13」では義足のモデル エイミー・マランスがランウェイを歩くというセンセーショナルな内容でしたが、話題を集めるための演出ではなく社会的弱者に寄り添い、何が美しく、そして美しくないのかという社会の固定観念自体を批判していたのです。
そして、フィナーレには真っ白なドレスをまとったスーパーモデルのシャローム・ハーロウに2体のロボットがスプレーペイントをするというファッション史にも残るほどのショーとなりました。

グッチ・グループによる買収によってブランド拡大

　 2000年にはアレキサンダー・マックイーンというブランドとって大きなターニングポイントとなる年です。
GUCCI（グッチ）によるアレキサンダー・マックイーンの買収提案が行われ、そしてジバンシィのクリエイティブ・ディレクターを兼任していたアレキサンダーはジバンシィを解任され、アレキサンダー・マックイーンに専念することになりました。

そして、グッチ・グループの資金援助を得ることが出来るようになったこと、そしてジバンシィのコレクション製作の負荷がなくなったことでブランドとしては拡大路線を辿っていきます。

まずは2004年にメンズウェアラインの立ち上げを行い、サヴィルロウで培ったテーラードの経験をもとに構造や組み立てといったベーシックな部分には伝統的な技術を取り入れながら、現代的な要素を加味しメンズの既製服コレクションを完成させたのです。

さらに2005年にはPUMA（プーマ）とのコラボレーションによって、斬新で画期的なフットウェアコレクションを発表。
2007年にはサムソナイトとのコラボレーションで豪華な旅行用品を発表するなど積極的なコラボレーションを展開。

そして、2006年にトレンド指向の若者向け「McQ ALEXANDER McQUEEN（マック・アレキサンダー・マックイーン）」というセカンドラインを立ち上げて、デニムを基本にしたウィメンズ、メンズ、アクセサリーなどのプレタポルテ販売を開始しました。

もちろんグッチ・グループに買収されてからも奇抜でオリジナリティ溢れるコレクションは開催されており、2005年のコレクションでは親友のケイト・モスがコカイン使用の容疑でファッションブランドからの契約を打ち切られる中で、「WE LOVE YOU KATE（ケイト愛している）」と書かれたTシャツでランウェイに登場し、翌年のランウェイではケイト・モスのホログラムを浮かび上がらせるというショーを敢行。

そして2010年のコレクションではレディー・ガガが愛用したことでも有名なアルマジロシューズがお披露目されました。
しかし、これが結果的にアレキサンダーの最後のコレクションとなりました。

アレキサンダー・マックイーンの亡き後もブランドは成長

2010年にアレキサンダー・マックイーンが自殺によりこの世を去りました。


　 そして、しばらくはデザイナー不在でブランドを存続させるというのがグッチ・グループのCEOロバート・ポレットによって発表されましたが、3か月後にはアレキサンダーの右腕として14年もの間支え続けてきたサラ・バートンがクリエイティブ・ディレクターに就任したのです。

天才と称されたアレキサンダー・マックイーンの後任を任されたサラ・バートンはファッション業界ではほとんど無名の存在でしたが、2011年にウィリアム王子とキャサリン妃の結婚式のウェディングドレスをデザインするという大役を全うし、一躍スターダムに躍り出たのです。

実際のところサラ・バートンの活躍とグッチ・グループの後押しによってアレキサンダー時代以上にブランドは成長をしています。

ウェアだけではなく、バッグなどのレザーグッズなども人気が出ており、日本を含めた世界への店舗展開も加速しているのでよりアレキサンダー・マックイーンに触れる機会というのは増えていて、まだまだ成長を続けていくブランドとなるのではないでしょうか。

次は、異端児と呼ばれた悪ガキ「アレキサンダー・マックイーン」

この記事を監修しているのは？

ラグジュアリーブランド・ハイファッション調査部門

ラグジュアリーブランドやハイブランドでの勤務経験者、雑誌編集者、とにかくラグジュアリーブランドやハイブランドが好きなメンバーで編成。
好みや主観が入ったり、否定的な意見が存在するのは、ハイブランド.comの味であり、外部からの影響から独立しているからこそ出来ること。
世の中のトレンドや流れを敏感に察知し、常に新しい情報を発信出来るように奮闘しています。

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