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地球規模で考えるサスティナビリティ

サスティナビリティな服ってどういうこと？

(出典:https://www.stellamccartney.com) ステラ・マッカートニーの代名詞というとサスティナビリティ。
サスティナビリティというとなんだか難しい言葉でいったいどういう意味か分からないと感じる方も多いはず。
単純に日本語訳にすると「持続可能な」という意味になりますが、これがファッションといったいどんな関係性があるのでしょうか？

『ステラのファッション＝サスティナビリティ』
これを理解するためにはまずは彼女がどういう人物かというところから紐解いていく必要があります。

ベジタリアンなデザイナー

(出典:https://www.stellamccartney.com) ステラ・マッカートニーという女性はベジタリアンです。
実はステラの父親ビートルズのポール・マッカートニーもベジタリアンだったのですが、彼女もその血を引き継いでいます。

そして、だからというわけではないのでしょうがステラ・マッカートニーというブランドはウェアからバッグやウォレット、香水、スポーツウェアなど様々なコレクションを手掛ける中、そのコレクションにレザーや毛皮といった動物由来の素材を使っていないのです。

レザーを使っていないのかと聞いて、「ふーん」と思われるかもしれませんが、高級感が重要なラグジュアリーブランドにとってレザーを使わないという決断ははっきり言って異例中の異例です。
世の中のラグジュアリーブランドを見ても分かりますが、エルメスにしても、ヴィトンにしても、シャネルにしてもやはり高級ラインはレザーなのです。
モノグラムのようにキャンバス地に塩化ビニールコーティングを使っているものもあるにせよ、やはり「レザー＝高級品」という方程式は崩れません。

その象徴ともいうべきはチェーンバッグの『ファラヴェラ』でエコ素材のバッグのシンボルともなっていてステラ・マッカートニーのベストセラーバッグとなっています。

バッグのライニング素材にはリサイクルされたペットボトルが使われ、ヴァージンカシミアやアンゴラの使用も使用しています。
また、2015年の秋冬コレクションではまるで本物のファーのような質感を持つフェイクファーのコートを発表し話題を呼びました。

環境に徹底的に配慮したエコスタイル

(出典:https://www.stellamccartney.com) この動物由来の素材を使わないという考えから、さらに環境に配慮したエコという考え方も徹底しています。
NPOのキャノピーと共に「絶滅の危機に瀕した森林から伐採された木材を原料に繊維を作るのをやめましょう」というメッセージを発信しています。

近頃はコットンの価格が上昇していることもあり、木材由来のレーヨンやビスコースなどが注目を集めています。
しかし、洋服の素材として使用されるレーヨンの30％は絶滅の危機に瀕している森林から伐採された木材なのです。

こうした現状を踏まえてステラは、ハンドバッグに使われるファブリックはすべてリサイクル可能なペットボトルを再利用して作っています。
また、ビスコースなどは森林管理協議会FSCによって認証されたもので、持続可能な状態で管理されたスウェーデンの森林から調達されて物を使用しています。

ヴァージンカシミアはイタリアで生産時に出る繊維廃棄物を再為政したカシミア糸を代用しています。

ラグジュアリーブランドでも近年こういったエコ志向が強まってきている風潮はありますが、それでもラグジュアリーというのはやはり贅を尽くしたものであるというイメージがあるためこうした思い切った戦略をとることは難しい側面があります。

それをステラ・マッカートニーというブランド、デザイナーは地球規模の問題として捉え、実践しているというのがすごいのです。

その想いはコレクションにも広告にも

(出典:https://www.stellamccartney.com) 2017年秋冬コレクションはまさにステラ・マッカートニーのサスティナビリティの象徴ともいえるコレクションになりました。
広告テーマは「過剰消費」と「廃棄」
撮影場所がスコットランドのごみ廃棄場というから驚きです。

まさに現代の消費経済に警笛を鳴らし、真っ向から否定するという挑戦的な広告といえるでしょう。

ある意味、この広告自体は海洋廃棄されたプラスチックから生まれたリサイクル繊維や、ナイロン製の廃棄物を再利用してつくったリサイクルナイロン繊維ECONYLを使った製品の宣伝（当然広告なので・・）でもありますが、やはりステラ・マッカートニーの強い意志が感じられます。

しかし、ただ口だけでは終わらないのがステラです。
このコレクションではリサイクル素材のナイロンや植物素材のベジタブルレザー、オーガニックコットン、リサイクル繊維なといったエコ素材が使われています。
また、ステラ・マッカートニーのレディースウェアの50％以上はリサイクル素材で作られているというのは特筆すべき点です。

そして何より素晴らしいのは、こうしたリサイクル素材を使っていてもステラ・マッカートニーのスタイルを確立しており、決してチープではなくラグジュアリーで素晴らしいファッションを提案しているということです。

サスティナブルな新しい素材の開発に注力

(出典:https://www.stellamccartney.com) ステラ・マッカートニーが夢に見ているのは、ラボでレザーが作れるということ。
ラボでレザーが作れると地球に大きな影響を与える畜産を減らすことができ、それが地球温暖化の大幅な軽減にもつながる、そしてそのレザーをさらに手の届く価格で提供できるようになれば考えています。

こうした夢の素材を考えているステラ・マッカートニーだけに廃棄衣料品からセルロースを作るEVRNU（エバニュー）や人工ファーのECOPEL（エコペル）など様々なエコカンパニーと協業し夢の実現に邁進しています。

ステラ・マッカートニーにはスパンコールや刺繍を使ったデザインが少ないのですが、それはポリ塩化ビニールなどの石油ベースの素材を使わないため。
ファッションにおいて、思い描いたデザインに素材が追いつくようにサプライヤーとは良い関係を築き、サスティナブルな生産をしてもらえるように働きかけも行っています。

近年ではオーガニックコットンという言葉をよく聞くようになりましたが、これはコットンそのものの品質を上げるわけではなく、コットンの栽培の中で化学肥料や農薬に頼らない有機栽培されたコットンのこと。
身体にやさしいコットンではなく、地球にやさしいコットンというのが本当の価値なのです。

オーガニックコットンを使った洋服というのは当たり前のようにありますが、ブランドとしてこうした地球にやさしい環境再生型農業にも本気で取り組み、実践しているのがステラ・マッカートニーなのです。

次は、「コラボレーションからみるブランドの考え方」

この記事を監修しているのは？

ラグジュアリーブランド・ハイファッション調査部門

ラグジュアリーブランドやハイブランドでの勤務経験者、雑誌編集者、とにかくラグジュアリーブランドやハイブランドが好きなメンバーで編成。
好みや主観が入ったり、否定的な意見が存在するのは、ハイブランド.comの味であり、外部からの影響から独立しているからこそ出来ること。
世の中のトレンドや流れを敏感に察知し、常に新しい情報を発信出来るように奮闘しています。

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