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モードストリートを切り開いた開拓者の歴史

先進的デザイナーもブランドの立ち上げは地道な積み重ね

　 Rick Owens（リック・オウエンス）は、1962年にアメリカのカリフォルニア州で生まれました。
アメリカ人とメキシコ人の両親のもと保守的なカトリックの家庭で育ち、高校を卒業と同時にアートを学ぶためにロサンゼルスへと移動し、オーティス・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン（OTIS）で2年間学びましたが、ファッションの道ヘと進むために中退し、ロサンゼルス・トレード・テクニカル・カレッジでドレープとパターンメイキングを専攻しました。

リックオウエンスのドレープテクニックは非常に定評がありますが、学生時代からしっかりと基礎を学んでいたということになります。
そして、アートと服飾の両方を経験したことが現在の独創的なアイデアと卓越した技術の融合に繋がっているのでしょう。

卒業後はデザイナーウェアの違法コピーをしている会社で働き始め、その後90年代に入り後に妻となるミシェル・ラミーのスポーツウェアラインLamyでパタンナーを務めることになります。

ここまでの経歴を見ると、他の著名なクリエティブ・ディレクターのような華々しい経歴というわけではないですが、1994年になってついに自身の名前をつけたコレクションを発表することになります。
ロサンゼルスのハリウッド大通りに店舗をオープンし、ロサンゼルスでも先進的なブティックであったチャールズ・ギャラリーに販売することでコートニー・ラブなどのファンを獲得したのです。

リックオウエンスは、フランスのブランドという風に紹介されますが、生まれもブランドの立ち上げも実はアメリカで、フランスへはブランド設立後移住しているのです。

2000年を超えてからはブランドの評価はうなぎ登り

　 リックオウエンスの前衛的なファッションは次第に周囲の注目を集めていき、VOGUEアメリカの編集長アンナ・ウインターはリックオウエンスを高く評価し、2002年春夏シーズンでのニューヨークファッションウィークでのコレクションデビューを強く後押しします。

ここからリックオウエンスは快進撃を続けます。
2002年にはファッション界ではオスカー賞に匹敵するアメリカ・デザイナーズアワードの新人賞ペリーエリス賞を受賞したのです。さらにファー（毛皮）を中心としたフランスの老舗ブランドREVILLON（レビオン）のアーティスティック・ディレクターに任命されました。
このあたりからリックオウエンスというブランドは、期待の新星として知られるようになってきます。

しかし、2003年にはロサンゼルスで強盗にあい、レビオンとの契約もあったことからリックオウエンスはパリへの移住を行いました。
このタイミングでリックオウエンスはフランスのブランドとなり、さらにパリコレクションに活動の場を移したのです。


　 なんと2005年にはインテリアの世界にも進出。
最近ではアルマーニやフェンディなどファッションブランドがインテリアに進出することは珍しくなくなってきましたが、新興ブランドの家具への進出というのは大きな驚きと共に注目を集めました。

そして、2006年にはイタリアのメンズファッション見本市「Pitti Imagine Uomo」でゲストデザイナーに選ばれ、初のメンズショーを開催。
同じ年に初のスニーカーとして「GEO BASKET（ジオバスケット）」を発表したのです。


　 日本進出は、2009年フラッグシップストアを青山にオープンし、ブランドの世界観を伝えることで日本でのファンも急増しました。

リックオウエンスの活躍は、世界的に高い評価を集め、2017年にはCFDA（アメリカファッション協議会）の特別功労賞を受賞し、2019年には同じくCDFAメンズウェアデザイナーオブザイヤーに輝いています。

公私ともに最高のパートナーの妻ミシェル

　 リック・オウエンスを語る上では、妻のミシェルの存在は欠かせないものでしょう。
元々はミシェルのブランドでパタンナーとして働いており、その後2006年に結婚をしているのですが、リック・オウエンス自体は同性愛者だという一面も持っています。

ラグジュアリーファッション業界では同性愛者というのは何も珍しくはありませんが、結婚前の2004年にファッション会社Owenscorp（オウエンスコープ）を共同で立ち上げていることを考えても公私ともにパートナーという関係を築いているようです。
世間では、イヴ・サンローランとピエール・ベルジュのような関係性と思われていますが、性格的には伝説の女優カトリーヌ・ドヌーヴに近いらしいです。

しかし、優れたビジョンとインスピレーションを持つミシェルが共同経営者としてリックオウエンスというブランドを支えていることは間違いありません。

まだまだリックオウエンスの繁栄は続く

　 世の中一般的に言われるラグジュアリーブランドとしてはまだまだ歴史の浅いリックオウエンスですが、新興ブランドというほど浅い歴史ではありません。
1990年代からブランドをスタートし、すでに20年以上の歳月を経過し着実にブランドを成長させてきました。

今では世界中に300以上のショップでリックオウエンスが取り扱われており、本拠地のパリ、出身のロサンゼルス、ロンドン、ミラノ、ニューヨーク、東京、北京、香港、ソウルなど世界の主要都市に着々と直営店を展開しています。

すでに50歳を超えているリック・オウエンスですが、まだまだその勢いは衰えることなくこれからも斬新なコレクションでファンを魅了してくれるでしょう。

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この記事を監修しているのは？

ラグジュアリーブランド・ハイファッション調査部門

ラグジュアリーブランドやハイブランドでの勤務経験者、雑誌編集者、とにかくラグジュアリーブランドやハイブランドが好きなメンバーで編成。
好みや主観が入ったり、否定的な意見が存在するのは、ハイブランド.comの味であり、外部からの影響から独立しているからこそ出来ること。
世の中のトレンドや流れを敏感に察知し、常に新しい情報を発信出来るように奮闘しています。

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