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エミリオ・プッチ Overview

他にはない「ラグジュアリーリゾート」というブランドコンセプト

　 EMILIO PUCCI（エミリオ・プッチ）というブランドは年代によっていろいろとイメージが違うと思います。
すでに終わったブランドという方もいらっしゃるでしょうし、若い方だと逆に新鮮な気持ちで見ている方もいるでしょう。


　 1960～70年代にかけて大きなブームを巻き起こし、いわゆる「プッチ柄」と呼ばれる独特のパターンプリントや鮮やかなカラーパレットはエミリオ・プッチを一躍有名にしました。
逆にこうした一世を風靡したような印象に残りやすいデザインがあると廃れた時になかなか使いづらくなりますよね。

2000年という節目の年にエミリオ・プッチはルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー（LVMH）グループの傘下に入り、エミリオ・プッチの死後、衰退していたブランドのテコ入れが行われ、ちょうど1960年代リバイバルブームの追い風もあって再ブレークがありました。
当然リバイバルというのも一種のトレンドなので長続きするわけではなく、低空飛行状態というのが正直なところでしょう。

ただひとつ言えることは歴史あるブランドというのは、必ずと言っていいほど浮き沈みを経験しています。
バレンシアガのようにクリエイティブ・ディレクターの大抜擢によってブランドイメージをガラリと変えて大ブレークした例もありますし、あのグッチですら一時的にはブランドイメージが失墜していた時期があります。

そう考えるとエミリオ・プッチの持っている「ラグジュアリーリゾート」というDNAはかなり特異なものですし、「プッチ柄」や鮮やかなカラーパレット、シルエットや着心地にこだわるスポーティーなスタイルというアイコンは、時代を超えて再解釈されることによって「きっかけ」ひとつで再び大きなブレークをする可能性は十分にあると思います。

紆余曲折を経て2021年にブランドの原点であるリゾートに立ち返り、そのリブランディングの象徴としてルイ・ヴィトンでアクセサリー部門のトップだったカミーユ・ミチェリが新クリエイティブ・ディレクターに就任し、新しいプッチワールドを作る使命を担っています。

エミリオ・プッチとは実はどんなブランドなのか？
その秘めた魅力に迫ってみたいと思います。

今後も期待大！魅力たっぷりのプッチスタイル

　 エミリオ・プッチというブランドがスタートするきっかけは、本人がデザインしていたスキーウェアというのは比較的有名な話ですが、実はデビュー直後のエミリオ・プッチのスタイルというのはスポーツウェア、リゾートウェアなのです。

スポーツウェアの要素をイタリアンファッションに取り入れ、リゾート地での休暇をリラックスして過ごせるように服から余計な構造を取り除いたすっきりしたシルエットと鮮やかな色彩による『ラグジュアリーリゾート』というのがプッチスタイル。

そんな中で今も継承され続けるエミリオ・プッチの特徴的なスタイルというものがあります。

プリントの王子と呼ばれた「プッチ柄」

　 エミリオ・プッチの一般的なイメージというとこのプッチ柄に尽きるでしょう。
万華鏡からインスピレーションを得て1950年代に生み出されたプッチのシグネチャーであり、時代を超えたアイコンともなっています。

現代的に言うとグラフィックアートの様な幾何学的なパターンで様々なモチーフと美しい色の組み合わせによって芸術作品のようなプリントデザイン。
このモチーフにはエミリオ・プッチの周りにあったシシリアンモザイクやバリのバティック、アフリカの伝統的な模様、伝統競馬のパリオの紋章旗など様々なものやアメリカで起こっていたムーブメント「ミッドセンチュリー」などからもインスピレーションを得て創りだされました。
昨今では現代アートなども取り込まれたパターンも増えています。


　 このプッチ柄の大流行によってエミリオ・プッチは「プリントの王子」と呼ばれるようになりましたし、模倣品やコピー品が大量に出回ったので手書きの「Emilio」のサインを追加するようになっています。

あまりにもインパクトがあるデザインのため、何度も着れないというのが悩みの種ではありますが、現代においてもとてもハイセンスなデザインであることは確かです。

動きやすさ、着心地を追及して素材の開発へ

　 エミリオ・プッチの服というのはとても着心地がいいことでも有名です。
というのも創業当初から生地というものに強いこだわりを持って、独自の生地開発まで行ってきていたからです。

動きやすさというところにこだわり、当時ほとんどなかったストレッチ素材をイタリアの熟練生地メーカーと共同で開発しました。
特許も取得したシルクストレッチジャージーやコットンジャージーといったオリジナルのストレッチ生地です。

軽量で、シワにもなりにくく、何より伸縮性に富む素材で現在でもストレッチの効いたジャージー素材はエミリオ・プッチの服で良く使われています。

「コルセットからの解放」にも貢献したシルエットの美しさ

　 女性をコルセットから解放というとファッション界のピカソとも言われるポール・ポワレのことだと思われる方もいらっしゃるでしょうが、実はエミリオ・プッチもコルセットから女性を解放するというカルチャーに一役買っています。

オートクチュールの全盛期は分厚いパットやコルセットという身体を締め付け、重く動きにくい服が主流でしたが、スポーツウェアを軸に考えていたエミリオ・プッチはそうした実用的でない重さやボリューム、レイヤーといった構造を取っ払い、シンプルな構造で軽く動きやすい、それでいて女性らしいシルエットはしっかりと活かす服作りを行ったのです。

エミリオ・プッチのワンピースは人気アイテムですが、ある意味では仰々しいドレスをミニマルなワンピースにするくらいのインパクトを与えたのです。
そうした無駄を省いたミニマルで美しいシルエットというのは今もエミリオ・プッチのDNAとして継承されているのです。


こうして見ると、実はラグジュアリーとストリートが融合しつつある現代においてはエミリオ・プッチの持つリラックス感のあるラグジュアリーリゾートのスタイルというのはかなりハマるはずなのです。

そして、徐々にその芽が出つつあるのは、2017年以降のクリエイティブ・ディレクター不在状態に対して2020年にはゲストデザイナーとしてKOCHE（コーシェ）のデザイナーを招くなど、モンクレールやトッズなどで見られる外部デザイナーのキュレーション戦略によって新しい風を吹かせようと試みています。

世界を席巻したエミリオ・プッチの歴史

　 歴史的には1947年にイタリアでスタートしており、エミリオ・プッチが自身でデザインしたスキーウェアがアメリカの雑誌ハーパーズ・バザーに掲載されたことからファッションデザイナーとしてブレークし、エミリオ・プッチというブランドになりました。

1951年にフィレンツェでコレクションを行い、革新的なスポーツウェアがアメリカの百貨店などで人気化したことでアメリカを中心にして世界中で人気を集めていきます。
面白いのはイタリアンブランドなのにアメリカで発展していったということころですね。

プッチ柄やジャージー素材の開発などエミリオ・プッチならではアイコンを生み出し、1960年～70年代にかけては黄金時代でマリリン・モンロー、ジャクリーン・ケネディ・オナシス、エリザベス・テイラーなど当時のファッションアイコンがこぞってエミリオ・プッチを着用したことで憧れのブランドとなったのです。

ブームが去ると徐々に下火になっていき、低迷期に入りますが1990年～2000年代にかけての60年代リバイバルによって一時的に復活を果たし、2000年にはLVMHの傘下に入り、その後は数年ごとにクリエイティブ・ディレクターが入れ替わるという落ち着かない状態。

2015年に就任したクリエイティブ・ディレクターは、タレントのローラさんと噂になったことで有名なMSGM（エムエスジーエム）のデザイナー マッシモ・ジョルジェッティ。
期待されましたが、わずか2年ほどで2017年には退任し、そこからクリエイティブ・ディレクター不在となり、外部デザイナーをゲストとして招聘するキュレーション戦略に舵を切りつつあります。

そんな中2021年にブランドのルーツに立ち返り、リゾートに特化したリブランディングをすることを発表し、アーティスティック・ディレクターとしてルイ・ヴィトンのアクセサリー部門を統括していたカミーユ・ミチェリをクリエイティブ・ディレクターに指名し、新しいプッチのストーリーを紡ぐことが期待されています。

プッチ柄で世界を制したエミリオ・プッチの歴史

ファッションだけじゃない家具もすごい

エミリオ・プッチはファッションだけではなく、家具やインダストリアルデザインまで手掛けていることはあまり知られていないのではないでしょうか。

エミリオ・プッチの時代にはアポロ15号使節団のロゴデザインを手掛け、ブラニフ航空の客室乗務員の制服、そしてリンカーンやコンチネンタルといった高級自動車のデザインも行っています。


　 そして、最近ではイタリアの高級家具ブランドとして名高いKartell（カルテル）とのコラボレーションによる家具も発表しています。
2015年の世界最大級の家具見本市ミラノ・サローネでコラボレーションされ、世界的デザイナーのフィリップ・スタルクがデザインしたマダムチェアをベースにエミリオ・プッチのスカーフコレクションがあしらわれ、双方の魅力を存分に活かした美しいアイテムがデビューしました。


　 また2001年には、インテリアデザイナーのパトリック・ノルゲとコラボレーションし、イタリアの高級家具ブランドカッペリーニからソファをリリースしています。
このカッペリーニのソファもエミリオ・プッチらしいプッチ柄をあしらったユニークなソファとなっています。

家具の世界でもエミリオ・プッチのアイコンは活用され、大人気を博しているのです。

親子でプッチって素敵じゃない！？

　 2017年には満を持してキッズコレクションがローンチしました。
エミリオ・プッチとキッズというのはとても相性がいいと思いますので、正直なぜ今までなかったのかが不思議なくらいですが、それはエミリオ・プッチの娘でありブランドのトップでもあるラウドミア・プッチもそう語っているくらいです。

「キッズコレクションのデビューにあたってはイタリアの高級子供服ブランドのシモネッタと業務提携し、子供服のノウハウを取り入れています。


　 エミリオ・プッチの持つエレガンスはそのままに機能性を重視した子供らしいデザインにカスタマイズ。
レディスウェアと同じ素材やプリントが使われていますが、フリルやスパンコールのアップリケなど愛くるしいエッセンスをプラスすることで変化を加えています。

エミリオ・プッチの服が親から子供に受け継がれるというのはこれまでもありましたが、親と子供がペアでエミリオ・プッチを着るというシーンも今後は増えてきそうですね。


エミリオ・プッチは大きなブームの影響もあって落ち目ブランドのように思われる傾向がありますが、ブランドとして様々な戦略を打ち出しており、今後の展開にも非常に期待できるブランドです。 外部デザイナーの新しい感性を取り込んだ今後のコレクションには要注目です。

次は、「プッチ柄で世界を制したエミリオ・プッチの歴史」

この記事を監修しているのは？

ラグジュアリーブランド・ハイファッション調査部門

ラグジュアリーブランドやハイブランドでの勤務経験者、雑誌編集者、とにかくラグジュアリーブランドやハイブランドが好きなメンバーで編成。
好みや主観が入ったり、否定的な意見が存在するのは、ハイブランド.comの味であり、外部からの影響から独立しているからこそ出来ること。
世の中のトレンドや流れを敏感に察知し、常に新しい情報を発信出来るように奮闘しています。

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