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「高級腕時計」への挑戦

ラグジュアリーブランドで進む多角化

（出典:http://www.beige-tokyo.com/） 昨今のラグジュアリーブランドでは、様々な方面への多角化が進んでいることはご存知でしょう。
例を挙げるときりがないですが、エルメスやグッチ、ブルガリはカフェやレストランを運営していますし、アルマーニやフェンディ、ヴェルサーチはカーサ（インテリア）を手がけています。

ことファッションの領域で考えれば、ファッションブランドの高級腕時計への進出もまた顕著に現れています。
エルメスやルイ・ヴィトン、グッチやブルガリなどラグジュアリーブランドのほとんどは腕時計事業に参入しています。
なぜ腕時計なのかを考えると答えは明白で価格帯が高いからだと思います。

シャネルの時計って？

（出典:http://www.chanel.com/） シャネルの時計といえば一番に思い浮かぶのは「J12」でしょうか？
シャネルにおける腕時計の歴史を紐解いてみると始まりは1987年になります。
一番最初の時計は「プルミエール」。
この時計にはシャネルの技術、アイコンが凝縮されていて、チェーンベルトバッグ革紐を編み込んだチェーンがブレスレットに採用され、香水No.5のストッパーなども盛り込まれている。

その後も「マドモアゼル」や「マトラッセ」が発表されましたが、まだまだ高級機械式時計というよりは、アクセサリーの域を出ない代物でした。

こだわりの時計「J12」

（出典:http://www.chanel.com/） J12は、プルミエールの生みの親であるジャック・エリュが手がけたもので、これまでの装飾品でしかなかったシャネルの時計事業から本格的に機械式腕時計に進出した時計です。
挑戦としては、シャネルというとほとんどが女性向けの商品ばかりで、時計も当然そうでした。しかし、このJ12に関しては男性もそのターゲットとしたこと、そして技術面でも宝飾品から本格的な機械式腕時計としたことです。

ただ、ムーブメントに関しては主にETAから供給を受ける形になっています。
ムーブメントは時計を本業としているメーカーでも自社で作っているところは意外と少なくシャネル同様にETAから供給を受けているところがほとんどです。よくマニュファクチュールとエスタリブールと言われますが、マニュファクチュールと言われるムーブメントまで一貫して自社製造しているブランドは全体の10％ほどしかないのです。
そういった意味では服飾ブランドであるシャネルがムーブメントにまで手を出すのは難しいと思うので、当然の結果といえます。

J12には様々なこだわりが見られますが、第一はその素材です。
J12には航空機などで使われるハイテク・セラミックが使われています。しかも時計の心臓部であるムーブメントのパーツに至るまでこのハイテク・セラミックを使っているのです。
この技術面での課題を克服するために実に構想から7年の歳月を費やしています。

そしてカラーにもこだわりを見せており、これまでの高級腕時計の常識といえばステンレススチールやゴールド、プラチナというのがほとんどでした。
そこにもってきたのがアイコンカラーのブラックです。さらに次にホワイトを発表し、ホワイトはセラミックにジルコニアを配合するという独自の調合を施しています。

セラミックのいいところは、耐衝撃性がものすごく高いところで、ダイヤモンドよりも硬いもので衝撃でも与えない限りは傷つかないほどです。さらに温度による変化も少ないので夏の暑い時に時計のベルトがみょうにうっとおしくなるような感じもほとんどありません。

この素材とカラーによって革新的であり、機能性と美しさを兼ね備えていなければいけないというシャネルのアイデンティティが色濃く反映されています。

出遅れた時計事業でも妥協はしない

（出典:http://www.chanel.com/） J12のハイテク・セラミックという革新的な素材の研究に時間がかかったため、高級腕時計市場への参入が2000年と他のブランドの高級腕時計市場への参入に比べてかなり遅れたにも関わらず、一切の妥協はしていません。

高級腕時計を作るというのはとても繊細な技術を必要とするのですが、そんな難しい事業に対して自社工房を作りケース、ストラップの製造からケーシングまでの一連の作業を自社でまかなっています。

単に利益を上げるために参入するのではなく、革新的なものをつくり、驚きと感動、そして高い品質を妥協なく求めているのです。
その現れとしてスイスの公的機関であるスイス・クロノメーター検定協会が定める精度テストに合格したムーブメントに与えられる称号「クロノメーター」を取得している。
この称号は高い精度や品質を保証されたものという証であり、限られた時計にしか与えられていない名誉を「J12」は取得しているのです。

そして、後発であるからこそ、下手なイメージがつかないように販売する場所も考えました。
一般的なファッション店には置かずにジュエリーや高級腕時計を専門的に扱うフラッグシップ店だけでの販売とし、高級腕時計としてのイメージを作ることに成功したのです。

現在、シャネルの時計のイメージというのはファッションブランドの域を超えた本格的な腕時計と認知されているのはこうした努力と挑戦があって生み出されたのです。


企業というのは社会貢献という理由もありますが、基本的には利益を追求する必要があります。
しかし、シャネルは単に利益を追うだけではなく、機能的で美しく革新的な商品を生み出す挑戦を通して我々を驚かしてくれていて、その結果として利益を生み出している素晴らしい企業だということです。

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この記事を監修しているのは？

ラグジュアリーブランド・ハイファッション調査部門

ラグジュアリーブランドやハイブランドでの勤務経験者、雑誌編集者、とにかくラグジュアリーブランドやハイブランドが好きなメンバーで編成。
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世の中のトレンドや流れを敏感に察知し、常に新しい情報を発信出来るように奮闘しています。

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