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時代に先駆けた「ラグジュアリー・プレタポルテ」

新しいコンセプト「ラグジュアリー・プレタポルテ」

（出典:http://www.chloe.com/） クロエのコレクションを見ると、他のラグジュアリーブランドは一線を画すようなデザイン性を感じると思います。
オートクチュールのような重苦しさはなく、軽やかで現代的な何か新しい違ったものに。

クロエの創業当初のコンセプトは「ラグジュアリー・プレタポルテ」。
このコンセプトは60年以上の時代を駆け抜けてきた今でも変わりません。
戦後のパリの自由な空気を象徴するようなファッショナブルで、のびのびとした若さに溢れるコレクション。

それがクロエが先駆者として築き上げてきたものなのです。

常識を打ち破ったファッションの新しいカタチ

（出典:http://www.chloe.com/） 創業者のギャビー・アギョンは、エジプトの富裕層の生まれです。
彼女の家庭はとても裕福だったため、母親もファッションには大変こだわりを持つ人物でした。
しかし、当時のファッションというのは、オートクチュール全盛の時代、というより高級婦人服の中では既製服（プレタポルテ）という概念すらあまりないような時代です。

こうした閉塞感を打破するためにギャビー・アギョンはクロエを立ち上げて自身のコンセプトを推し進める決心をしたのです。
この「ラグジュアリー・プレタポルテ」いというコンセプトは、高級服を着られるのは比較的年齢層の高い裕福な女性だけという権威に満ち溢れたオートクチュールの世界からの脱却を狙い、若い女性をターゲットにした最初のブランドとなったのです。

ラグジュアリー・プレタポルテの素晴らしいところは高級ファッションの本質的なクオリティは損なわずに、華やかさも維持しながら、それでいて手頃な価格だったのでこれまで高価すぎて手の届かなかった若い女性たちでも買えるものであったことです。

しかもデザイン面でみれば、戦後の開放的なパリで自由を謳歌する若者たちのライフスタイルにしっかりとマッチするモードスタイル。
シャツドレスやスタイリッシュでストレートなシルエットのシガレットパンツ、丈の短いコートやジャケット、フェミニンなブラウスなど都会らしさがありながらも控えめで決して主張し過ぎないシンプルなものでした。

さらにオートクチュールでは定番だったコルセットのような体を締め付けるような堅苦しさは一切なく、人々の生活に溶け込み、自然に輝かせるような画期的なものだったのです。

伝統と好奇心のシンフォニー

（出典:http://www.chloe.com/） コンセプトは「オートクチュールの堅苦しさを排除すること」というとても明快なものですが、伝統的な手法のすべてを否定しているわけはありません。
オートクチュールにももちろんいいところがたくさなり、その美しい工芸手法に関してはとても大事に扱ってきました。

その一例がエンブロイダリー（刺繍）であり、「ラグジュアリー・プレタポルテ」のシンプルなスタイルの中の華やかな一面を彩ってきました。
ただ、クロエの刺繍は伝統的な刺繍とはまた異なり、独特のセンスや遊び心を取り入れた現代的なものです。

白のシンプルなブラウスであっても、金糸の刺繍によってラグジュアリーに輝き、オリジナルの物語を想像していくのです。
こうした新しいコンセプトに伝統技法で豪華な雰囲気に仕上げながらも、そこにはしっかりとクロエの流儀が息づいています。

創業者のギャビー・アギョンはもちろんですが、その後を継いだモードの皇帝 カール・ラガーフェルドもそうしたギャビーの意志を継いでいきました。
トロンプルイユという技法を取り入れ、インパクト抜群のおもしろい服を生み出していったのです。

トロンプルイユというのは、フランス語を直訳すれば「目を騙す」という意味になり、いわゆるだまし絵のことです。
このユーモラスなアイデアで、ドレスがハサミでカットされていたり、普通のスカートをブリーツスカートに見せたりとウィットに富んだスタイルを発表し続けました。

こうした流れは現代のクリエイティブ・ディレクタークレア・ワイト・ケラーにも受け継がれており、刺繍というものを活かした魅せる服を創造しています。

気どらないレディ・トゥ・ウェア

（出典:http://www.chloe.com/） クロエが最初に打ち出したラグジュアリー・プレタポルテのコンセプトは当然のごとくヒットしたため、他のクチュリエはすぐにこれを真似しはじめました。

もっとも早く追随したのはユベール・ド・ジバンシーで、1956年にはレディ・トゥ・ウェアのコレクションとしてジバンシー・ユニバーシティを発表しました。
これにならって他のクチュリエも続々とプレタポルテに進出していったのです。

現代を見てみるとオートクチュールよりも圧倒的にプレタポルテ（レディ・トゥ・ウェア）の方が多いことが分かります。
もちろんオートクチュールは、今でも魅力的なものではありますが、一般の人でも手の届く服としてプレタポルテは現代のファッションに完全に定着しています。

これを流れを作ったのが、クロエであり、ギャビー・アギョンということを考えれば、ファッション業界に与えた影響というのは計り知れないものがあります。

現代でもクロエのレディ・トゥ・ウェアは、シンプルで飾らない魅力がありながらも、どこか華やかな一面を持つとてもすばらしいコレクションを発表しています。

パディントンなどのエディターズバッグが大流行して、脚光を浴びたクロエではありますが、レディ・トゥ・ウェアの魅力もぜひ知ってください。

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この記事を監修しているのは？

ラグジュアリーブランド・ハイファッション調査部門

ラグジュアリーブランドやハイブランドでの勤務経験者、雑誌編集者、とにかくラグジュアリーブランドやハイブランドが好きなメンバーで編成。
好みや主観が入ったり、否定的な意見が存在するのは、ハイブランド.comの味であり、外部からの影響から独立しているからこそ出来ること。
世の中のトレンドや流れを敏感に察知し、常に新しい情報を発信出来るように奮闘しています。

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